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4月23日のまにら新聞から

自国民を2等市民扱い

[ 692字|2007.4.23|社会 (society)|新聞論調 ]

殺人事件に見る対応格差

 平和部隊員の米人女性が殺害されたのは遺憾で、犯人の早期逮捕を願うばかりだ。それにしても、フィリピン人が被害を受ける政治的殺人事件と比べ、今回の米人殺害事件に対する大統領府の素早い反応と地元マスコミの大きな報道ぶりは驚きだ。政治的殺人事件で大統領府は「遺憾声明」を出したことはない。アロヨ大統領は政治的殺人事件を非難はするが、関与を強く疑われる国軍をやり玉に挙げたことはない。

 被害者が米人あるいは比人であろうと、命を奪われた事実に差はない。それなのになぜ、地元マスコミは米人の事件を大々的に報じ、比人殺害事件を地味に扱うのか。米人の事件で大統領府は「比米関係が損なわれることはない」などの声明を出した。なぜ、政府はそうまで気を使うのか。米大学内で起きた虐殺事件でも政府は追悼声明を出した。地元紙は、何千キロも離れた外国で起きた虐殺事件に大きなスペースを割いて報じた。

 これに対し、政府は政治的殺人の比人被害者にどのような声明を出したのか。ミンダナオ地方で起きた人質七人の頭部切断事件は大きく報じられたが、事件発生当初、大統領府は被害者の身を案じる声明を出さず、マスコミの報道も小さかった。

 あまりにも差のあるこうした対応ぶりは、政府、マスコミが自国民を「二等市民」扱いしているようなものだ。しかも政府は、この国で相次ぐ殺人事件に深い憂慮の念さえ表していない。この国の殺人・拉致事件被害者数を考えると、深刻さは米人殺害事件や米大学虐殺事件のそれを上回る。比人か外国人かを問わず、命の尊さに格差はない。政府およびマスコミが平等な姿勢、対応をとるよう求める。(21日・トリビューン)

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