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4月9日のまにら新聞から

人命救助にもっと予算を

[ 679字|2007.4.9|社会 (society)|新聞論調 ]

セブ火災を教訓に

 防火対策月間にあたる三月最終週にビサヤ地方セブ市で火災が発生、七人が焼死した。食品倉庫を兼ねた家から出火し、二階の窓際に逃げ、救助隊の腕をつかんだ被害者もいたが鉄製の窓枠を壊すことができずに取り残された。この火災であらためてフィリピンの消防体制の不十分さを思い知らされた。

 もし十分な装備が消防隊に備わっていればこの鉄製の窓枠は破壊できたに違いない。しかし国内でも有数の富裕層が住むマカティ市の住宅地でも状況は同じなのだ。二〇〇五年のクリスマス前にデベネシア下院議長宅で発生した火災では、同議長の娘がやはり自宅の窓枠を破壊できずに焼死した。

 消防局を管轄するプノ内務自治長官によると、フィリピンでは消防車や消火設備だけでなく、消防署自体も足りないという。全国の消防署員一万三千人に対して耐火処理を施した消防服は二千六百着しかない。全国千六百町のうち消防署があるのは七百八十町にすぎない。最も最近消防車を購入したのは二〇〇二年にまでさかのぼるという。このほど消防局と刑務局に対し承認された補正予算三十億ペソは、両局職員の給与を警察官並みに引き上げるのに充てるとそれで終わってしまう。

 このような状況にあるため、マニラ首都圏やその他の主要都市では中国系フィリピン人コミュニティーが消防車や消火設備の寄付やボランティアによる消火活動支援を行っている。しかし、この支援にもかかわらず、今回セブで発生した火災では中国系フィリピン人の七人の命を救うことはできなかった。政府がもっと人命救助に対する投資を行わない限り、同様の悲劇は続くだろう。(3月27日・スター)

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