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7月10日のまにら新聞から

信頼性の喪失

[ 692字|2006.7.10|社会 (society)|新聞論調 ]

疑惑渦巻く中央選管

 アロヨ政権の周辺で今、「現中央選挙管理委委員たちに来年実施の国政選挙をもう一度担当させよう」との声が上っている。しかし、これほど国民を愚弄(ぐろう)する話はない。現在の中央選管委員たちに「二度目のチャンス」を与えるとは、とんでもないことだ。

 「神は罪を許す。お前も同じことができるはず。人間は変われるのだ」というのが政府側の言い分なのだろう。しかし、公正に実施すべき選挙で、票の不正操作や集開票用機器の発注疑惑などを持たれた中央選管委員たちに「二度目のチャンス」を与えることは言語道断だ。

 マルコス独裁政権下の中央選管は、世界でもまれにみる汚い選挙を行い、その信頼性は地に落ちていた。当時、だれもがマルコス大統領から怒りを買うのを恐れて不正を働いた。

 現中央選管委員たちに来年の選挙を任せることに政府内から異議が出ないのは、アロヨ大統領がマルコス(元大統領)以上に恐れられているからだろうか。民主政治下でかつての「悪夢」を再現させてはならない。

 中央選管は、各自が平等な権限を持つ委員たちで構成されている。つまり、一人の委員が絶対的な決定権を有するのではない。中央選管の決定は総意によって行われる。不正や失敗があった場合、その責任を一人の委員に押し付けることはできない。全委員が決定に等しく責任を持つべきなのだ。

 この原則に従えば、現中央選管委員に「二度目のチャンス」はあり得ない。不正行為を働いた委員がいれば、他の委員たちも共同で責任をとらねばならない。アバロス委員長やボラ委員らは当然辞任しなくてはならない。それなくして、中央選管の信頼性回復は困難だ。(7日・マラヤ)

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