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11月14日のまにら新聞から

自慢癖さらけ出す

[ 688字|2005.11.14|社会 (society)|新聞論調 ]

大統領と誤認逮捕

 国家警察はミンダナオ島サンボアンガシブガイ州でイスラム過激派、アブサヤフの幹部、ラドゥラン・サヒロンの身柄を拘束したと発表。その直後、アロヨ大統領は喜び勇んで国家警察の功績をたたえる声明を出した。だがその翌日、何と誤認逮捕だったことが明らかになった。

 この国では捕らえた重要事件の犯罪者を報道陣の前にさらす。アロヨ氏はこれを好む最初の大統領ではない。しかし、自慢できることなら、確認が不十分なまま、自分の功績を吹聴したがる初の大統領なのである。これが彼女の問題だ。

 大統領は現場に赴いた国家警察長官の最終報告を待つべきだった。長官に同行した幹部は容疑者が別の地域で目撃されているという情報を得ており、拘束された人物が本当にサヒロン容疑者であるかを疑っていた。

 警察が間違いを犯すことはある。今回の件で唯一の朗報は警察の悪習になっている「身柄拘束と事情聴取より銃撃の優先」を抑制したことだ。警察は容疑者の身柄を確保した上で誤認に気付いたのだ。

 この一件は、容疑者の逮捕をめぐる政府方針の問題の核心をついている。方針とは大統領の先導のもと、被疑者を逮捕して身柄を公にさらして、報道発表することである。こんなことは法の執行者がすべきことではない。

 法の執行者の任務は犯罪の被疑者として手配されている者を捜査し、身柄を拘束して裁判所で厳正な法の裁きを受けさせることである。公判中の被告には無罪推定の原則が適用されている。だからマスコミの前に容疑者をさらすことは、不当な「有罪判決」を下すだけでなく、警察自らの信頼性を失うことにもつながるのである。(9日・インクワイアラー)

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