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12月6日のまにら新聞から

今度こそ抜本策を

[ 678字|2004.12.6|社会 (society)|新聞論調 ]

繰り返される水害

 年平均でフィリピンには約二十の台風が襲来する。台風に比べると熱帯低気圧への国民の関心は低い。気象庁は、サマール州に被害をもたらした熱低ウィニーに対し、警報1を発令するにとどめた。

 一昼夜で二百ミリもの豪雨を招いた熱低ウィニーの被害はビコール地方からルソン島北部まで広範囲に渡った。ウィニー発生の二週間前に通過した台風ウンディン、熱低ヴィオレタと同じ進路をたどったため、追い討ちをかける豪雨が浸水していたケソン州などを襲った。

 鉄砲水や土砂崩れによる死者は五百人を超えているとみられ、最も甚大な被害を被ったケソン州は三百六人の死者を出した。

 なぜ弱い熱低ウィニーが多くの死者を出し、大きな破壊を招いたのか。もちろん、すでに浸水した土地に豪雨が見舞ったことが直接の原因だ。しかし、水の流れをせき止め保水能力のある山林があれば、土砂崩れや洪水はこれほど深刻にならなかったはずだ。違法伐採の結果である。

 アロヨ大統領は一日、「被害拡大の原因である違法伐採は国民に対する最も重大な犯罪行為だ」と非難。さらに「今回の洪水や土砂崩れは国民に対する警報であり、これまでの環境保全の在り方を見直すべき時期が来た」と話した。

 一九九一年、レイテ島オルモック市で台風通過に伴う集中豪雨で、市民約五千人が死亡した。昨年十二月にも同じくレイテ島南部の洪水で百五十人が亡くなった。問題は、被災した国民が、事態が収拾されれば眠ったように教訓を忘れることだ。環境問題に関心を抱くのはほんのわずかである。政府は今度こそ目を覚まし、抜本策を実行すべきだ。(2日・インクワイアラー)

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