得した者はいない
水道会社国有化
政府がマニラ水道サービス会社(MWSI)の経営権を取得した時期については首を傾げざるを得ない。経営権取得は野党勢に格好の政府非難材料を与えた。政府は時機をわきまえていなかったのだろうか。昨年十二月、社会保険機構(SSS)が所有する商業銀行全株式の二九%を百四十億ペソで売却することである商業銀行と合意した。この時は皆がクリスマスムードに浸っており問題にならなかった。
今回の合意で、首都圏水道局(MWSS)は約八十億ペソの債権と引き換えにMWSIの全株式の六一%を取得。さらに、ロペス財閥と仏企業体が預託した契約履行保証金一億二千万ドルのうち五千万ドルを得る。しかし、新生MWSIには依然、百億ペソ超の債務が残されることになるという。
野党勢は「取り巻き主義の再来」「ロペス財閥に対する救済措置」などと非難。大統領選候補のロコ前教育長官は合意条件の見直しを呼び掛けた。ロペス財閥所有の有力テレビ局「ABSーCBN」のキャスターだった野党連合の副大統領候補、レガルダ上院議員も「国民の信頼への許せない裏切り」などと訴えている。
しかし、大統領府はMWSI給水地域への水の供給を続けるためには国有化が必要と主張。ロペス財閥側は「八千万ドルをかけて取得したMWSI株の所有権を放棄するのになぜ救済措置なのか」と反論し、現政権との大統領選をめぐる政治的取り引きも否定した。
現時点で明らかに思えるのは、この合意で得をする者はいないということだ。しかし、ロペス財閥が損の少ないうちに手を引くことができるのに対し、MWSIの負債のつけは利用者や国民に回されることになる。(24日・インクワイアラー)