「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

本日休刊日

5月12日のまにら新聞から

正確な対応策の周知を

[ 716字|2003.5.12|社会 (society)|新聞論調 ]

SARS対策の要

 新型肺炎(SARS)に関連して、もう一つ流行している「SAIS」という症候群がある。、すなわち「SARSに関する情報の深刻な不足」(シビア・アブセンス・オブ・インフォメーション・オン・サーズ)だ。

 厚生省は情報を提供していると言うかもしれない。マスメディアも手洗いの励行など衛生の重要性を喧伝するなど、同様の努力をしている。

 しかし、SARSに関する情報不足が一番問題になるのはバランガイ(最小行政区)レベルだ。SARS対策の最前線であり、海外からの帰国者と不衛生な住居を抱えているからである。

 行政末端の情報不足を象徴する出来事が続いている。パンパンガ州マバラカット町の町長は、高温で焼かれた灰にウイルスが残っている可能性はないのに、香港で死亡した同町出身女性の遺灰を町に埋葬するのを拒絶した。またレイテ州タクロバン市の市長は、サマール州から同市の病院に患者が運び込まれそうになったため、サンファニーコ橋を閉鎖。患者の隔離ができなくなった。

 隔離や検疫は周囲の人々の協力がいる。責任を持って人道的に対処するには保護策の周知が必要だ。①感染が疑われる人をどうやって病院に運ぶのか②患者の家はどう処理するか③家族のどの範囲を隔離するか││などだ。

 これら対策の主役は地方自治体職員である。「爆弾」のたらい回しや、利己的な対応はしてはならない。SARSは個人の権利を侵害せずには解決できない。個人の権利と公共の福祉が損なわれる時こそ知識が必要なのだ。

 情報不足によるヒステリー状況で患者が虐待されれば、感染者は報告されにくくなる。患者数が分からなければ、流行はさらに長引くだろう。正確な情報が第一である。(9日・トゥデー)

新聞論調