国内観光振興狙う?
米国の旅行注意勧告
インターナショナル・ヘラルド・トリビューン誌によると、米国務省がテロ活動の標的になりうるとして東南アジア諸国に旅行注意勧告を出すことについて、各国に駐在する米国大使と国務省との間で議論となったという。マレーシア、シンガポール、タイ駐在の大使はこれらの国がテロの標的になる可能性は少ないとして勧告リストから除外するよう求めたのである。しかし、結局、米国務省は、これら三国を含むアジア十一カ国について勧告を出したのである。
当然、この注意勧告にはフィリピンも含まれた。わが国の観光省と外務省はこの勧告に抗議したが、「非難されるべきは受け入れ国だ」とはねつけられた。観光省もテロ事件はごく一部に限られて発生しており全国的なものではないと主張している。だが、米国政府にとって、あくまで事件はフィリピン国内で起きており、その国に休暇を過ごそうとする米国人旅行者がいるから勧告は必要だということなのだ。
しかし、同誌は、米国のダブルスタンダードも指摘している。つまりアルカイダのテロ組織ネットワークは東南アジアだけでなく、全世界にまたがっているということだ。あるアジアの国に派遣された欧州の大使は、米国や欧州にもアルカイダ組織が存在すると指摘している。しかし、欧州諸国は、ニューヨークのワールドトレードセンターが攻撃された後も、自国民に対し、米国への旅行勧告は出そうとしなかった。
結局、先進諸国は、テロの攻撃にぜい弱な第三世界への旅行を自粛させることで、国内観光の振興を図っているのだろう。先進国の観光業界だけが生き延びるために第三世界の観光業界を追い落とそうとしているのだ。(13日・アマンド・ドロニラ・インクワイアラー)