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12月3日のまにら新聞から

感染拡大への警告

[ 706字|2001.12.3|社会 (society)|新聞論調 ]

世界エイズデーに際し

サラジェーン・サラザールさんは、感染者として姿を現し、国内のエイズ撲滅キャンペーンに登場した人だったが、すでにこの世を去っている。保健関係者は現在、フィリピンがエイズ対策について自己満足に陥りつつあると警告している。

 エイズが初めて確認されて以来、世界中で二十年間ほどで四千万人が感染したとみられ、二千五百万人が既に死亡している。フィリピンはこれまで比較的エイズ禍から免れており、今年九月までの公式発症数は千五百六十一人にとどまった。

 しかし、関係者は、フィリピンでの発症者数は最近増加しつつあると警告している。また、世界保健機関(WHO)も現在のフィリピン人の感染者数は一万人にまで増加したと推定している。特に貧困による性産業の膨張と宗教的規制でコンドーム使用が進まないことなどがその背景にあると指摘する声もある。  

 きょう一日は世界エイズデー。今年の新しいテーマは「男が状況を変えられる」だ。WHOの西太平洋地域事務所(マニラ市)は、同地域の感染者のうち男性が八割を占めると報告しており、男性への情報キャンペーンを進め、予防プログラムへの協力を求めたいとしている。

 国連の報告でも今年だけで約三百万人がエイズで死亡すると推定されており、これは世界の死因の第四位にあたる。感染者だけでも今年中に新たに五百万人増加すると見られている。新規感染者が最も多いのは東ヨーロッパ地域だが、アジアでも百万人を超えると予測されている。

 フィリピンはこれまで感染者数が少なかったため、あまり問題にならなかった。しかし、いったん感染が広がると急速に進むのがこの病の特徴だ。防止プログラムを積極的に進めるべきだ。

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