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5月21日のまにら新聞から

和解と再生の時来た

[ 689字|2001.5.21|社会 (society)|新聞論調 ]

「エドサ3」と暴動の遺産

 上院選は、選挙というプロセスを介さずに選ばれたアロヨ大統領の信任投票だった。同時に、政権交代劇で辞任を余儀なくされたエストラダ前大統領、そして富裕、貧困層に国を二分した「ピープルパワー3」の是非を問う国民投票でもあった。

 中間集計では、与党連合が野党をリードしている。これはアロヨ大統領の「合憲性」が、国民によって認定されたことを示しているだろう。

 しかし、問題はこれで解決しない。国は社会の分断、階層の対立という根深い問題を抱え込んだままだ。

 五月一日、マラカニアン宮殿前を埋めた群衆の姿を通して、私たちは貧困問題が爆発寸前の状態にあることを知った。群衆の中には、確かに政治的狙いから動員された人々も混じっていただろう。だからといって問題から目をそらしてはならない。

 貧困層に属する人々は、歴代政権に存在を無視され続けてきた。一方では、選挙の時だけ一部政治家に利用されるといった苦い思いを心に刻んできた。前大統領支持集会がエドサ聖堂前で開かれたあの六日間、アロヨ大統領は、彼らの声を耳にしたことだろう。そして「政府と社会も声に耳を傾ける時が来た」と悟ったに違いない。

 階級闘争に勝者はいない。闘争により無政府状態が発生した場合、政府に取って代わるのはだれか。それは軍隊以外にはあり得ない。

 一九八六年のアキノ政変、今年の「エドサ2」は、国民の力がなしえることを示した。しかしながら、群衆が国を支配するような事態はもう二度と招いてはならない。与党、野党、富裕層、貧困層。選挙が終わった今こそ、すべての国民が和解と再生のためにそれぞれの責務を果たすべき時が来たのだ。

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