ハロハロ
猛暑続きの東京を離れ、信州の秘境・秋山郷に出掛けた。同行したのは同じ年ごろの仲間4人と運転手役の女性フリーライター。上越新幹線の途中駅で落ち合い、レンタカーで目的地に向かう。信州でも有数の豪雪地帯といわれ、山間部に入ると、田園風景が一変し、断崖絶壁の曲がりくねった狭い山道になった。ところどころに対向車とすれ違う退避区域があるが、運転手はいっときも気が抜けない。
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「信州百名山の宿」として紹介されている秋山郷の一軒宿に泊まった。山あいに本家(食事所)と7戸の分家(コテージ)が配置され、建物同士は豪雪でも耐えられるという屋根付の長い渡り廊下でつながっている。江戸時代の文人が世に紹介した文献を基に再現したという。雪除けに傾斜した本家の黒光りの屋根が美しい。露天風呂から残雪を頂いた2千メートル級の荒々しい山肌が目の前で眺望できた。
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同行した女性フリーライターは高齢者の両親を抱え、仕事の合間に車で福祉施設への送り迎えをしている孝行娘。年齢は適当に召しているが、運転技術はプロ並みの腕前。口やかましい年配者たちの難題にも即座に対応し、どこへ行くにも同行をいとわない。「高齢者の扱いは手慣れたもの。楽ちん楽ちん」と毎回、楽しんでいる様子だが、こんな孝行娘と一緒に生活している両親がうらやましい。(富)