ハロハロ
比国籍の子どもたちの願いは届かなかった。日本国籍の回復を求めて提訴して2年余り。東京地裁は原告26人の訴えを退けた。雨が降りしきる中、期待を込めて比から駆けつけた原告と父親らの無念さを思うと、法廷で慰める言葉もなかった。判決理由を朗読しない民事事件の判決は、主文だけの言い渡しで閉廷するが、今回も開廷後、1分足らずであっけなく終わった。ぼう然とする原告や関係者をよそに、法廷ではもう次の裁判が始まる。
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判決後、記者会見した原告父子らに「なぜ手続きをしなかったのか」と質問が飛んだ。父親は「国籍法の3カ月規定を知らなかった」と言ってうつむいたが、自らの手落ちで子どもの日本国籍を喪失したことに、自責の念が消えたことはないという。姉妹で国籍が違う原告の長女は「私は日本人としての権利がある」と気丈に答えた後、感極まったのかハンカチで涙をぬぐった。
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結審の弁論に続いて来日した別の父親は、原告らが思い切り陳述できない裁判の仕組みに何度も不満をあらわにした。弁護士らから説明を受けても腹の虫が治まらない。記者会見では努めて冷静に対応していたが「皆さんも私たちと一緒の目線で見てほしい」「処罰するなら子どもではなく、私を処罰してほしい」と苦しい心境を吐露した。法律の厚い壁に阻まれ、どうにもならない父親の悲痛な叫びと受け取った。(富)