ハロハロ
巨匠ヒッチコックの名作「裏窓」をケーブルテレビの映画チャンネルで見た。ニューヨークの裏町に住む元カメラマンが主人公。事故で足を骨折し、車椅子生活を余儀なくされた彼の唯一の楽しみは、望遠レンズで向かいのアパートの住人たちの人間模様を観察することだった。ある日、いつも口げんかが絶えなかった中年夫婦の殺人事件に巻き込まれてゆく。
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かつてニューヨークで単身暮らしをしていた頃、マンハッタンの高層アパートで「裏窓」の主人公よろしく、双眼鏡で斜め向かいのアパート住人の暮らしぶりを眺めていたことがある。定点観測先は三つあって、アラブ生まれらしい中年夫婦、南欧系のカップル、それにブロンドの独身女性。ある夜、そろそろ「事件」が起きるかもしれないと、いつものようにレンズを定点ポイントに合わせようとして一驚した。窓際に立った若い男が双眼鏡でこちらを見ているではないか。
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原作映画にはヒッチコック自身が端役で出演していたが、ケーブルテレビでは当人にお目にかからなかったから、どうやらリメーク版だったらしい。それ以来、自宅アパートから見える周辺の高層ビルに、朝まで明かりがついているオフィスが月ごとに増えているのが気になり始めた。恐らく、この国で勢いづいているビジネスプロセス関連企業のはずだが、遠くて肉眼では確かめようがない。(邦)