ハロハロ
首都圏南郊で背を伸ばすマキリン山。そのふもとの丘陵から見渡す自然は、こじんまりとした、言ってみれば箱庭のような日本の風景を見慣れた目には、とてつもなくスケールが大きく映る。つい先日の朝早く、拙宅から真正面に見えるタール湖畔の南端に始まり、右手に当たるタガイタイ高原の北斜面に向けて、厚みが同じ層雲が20キロ以上も棚引いていた。見上げるのではなく、自分の目線とほぼ同じ高さで一つの雲が真横に延びる様は壮観だった。
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そんな景観の中で、9月になると、日本と同じ「秋」を感じる動植物に出会える。代表格はフィリピノ語で「タラヒブ」と呼ぶススキ。日本のものとそっくりな赤トンボ。この二つは俳句で秋の季語だが、それに季語が春のチョウが仲間入りしている。フィリピンのチョウは種類が豊富で、日本の6・7倍近い約1670種が生息しているという。種類が豊富なだけでなく、つい見とれるほど翅(はね)の色が鮮やかなチョウが拙宅の庭でも舞っている。
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朝方、マキリンを背にして飛び交うツバメはまだ居残り組だけのようだ。この国の空を飛ぶツバメは3月中旬から5月中旬にかけて日本へ飛び去り、朝方の最低気温が東北以北で約10度以下、九州から関東にかけての太平洋沿岸地方で15〜20度以下になると、日本生まれの子を連れて戻ってくるという。だが、今年の日本は全国的に記録破りの猛暑だったためか、気象庁の予想気温からすると、今月末までに戻ってくる気配はなさそうだ。 (濱)