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3月2日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 648字|2009.3.2|社会 (society)|ハロハロ ]

 マニラ首都圏暮らしの中で、興味を持つ一つが書店の存在。ナショナル・ブックストアなど大手書店三社は現在、首都圏内で計七十八店舗を展開するが、並ぶ書籍、雑誌は米英両国など英語圏での出版物が大半を占める。フィリピン語版や自国関係書籍は極めて少なく、店内の隅で冷遇されているのが何とも哀れ。半面、世界の良書や最新本がたやすく、安価に入手できるのはありがたい。

 最近もその恩恵にあずかった。マカティ市の大型モール内の書店でアジア関係書籍コーナーに足を向けた際、細身を民族衣装に包み、鉄格子の向こうから力あるまなざしを向ける女性の表紙が目に飛び込んできた。女性はビルマ(現ミャンマー)民主化運動の象徴、アウン・サン・スー・チーさん(63)=自宅軟禁中。この本は英国人の著作「Perfect Hostage」で、スー・チー評伝の最新版。政治舞台への初登場(一九八八年八月二十六日)を導入部に、その後の軟禁生活でも軍事政権の圧力に屈せず、民主化を目指し続ける毅然とした姿を克明に描いている。

◇ 

 読み進み、ノーベル平和賞(九一年)がスー・チーさんに贈られたくだりでは、授賞発表の当日、駐在地バンコクから首都ラングーン(当時)の市民に国際電話を入れ、「歓喜の声」を取材した記憶が懐かしくよみがえった。ミャンマーには計五回、出張取材し、そのたびに都市、地方で目にした書店の多さが忘れられない。並ぶのはもちろん、ビルマ人作家らの作品で、国民が自国の文化、文学作品に寄せる「誇り」が感じられた。(道)

ハロハロ