ハロハロ
[ 546字|2009.1.12|社会 (society)|ハロハロ ]
「探し物は何ですか」と井上陽水は歌う。退職後の宿題は三つばかりの探し物と幼年期を過ごした中国東北部の旧奉天(瀋陽)を訪問することだった。後者は二〇〇七年五月に意外と簡単に実現。昭和十九年まで住んでいた満鉄のアパートも残存していて、六十年の昔に想いをはせながら満足して帰ってきた。
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「探し物」は①大学の卒業論文②自分の書いた記事のスクラップブック約十冊③ナポレオン金貨︱︱二十年前の引っ越しの際、どこへしまったのか、妻に急死されて分からなくなった。死ぬまでには見つけなきゃと思いながら、放置したままだった。ところが昨年、四十代の一人息子が突然結婚、カップルが家内整理に励んでくれたおかげで屋根裏部屋の茶箱の中から①と②が出てきた。
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①は修学の記念品、②は記者稼業の身にはかけがえのない財産で火葬場まで持っていくつもりの品。見つかって肩の荷が下りた。パリ特派員時代の一九七八年、ギャンブル運絶好調で六カ月の間にマージャンで役満貫を六回上がった。そのたび一枚ずつ記念に買ったのがナポレオン金貨、計六枚。お遊びの代物だが、未発見のままというのもしゃくに障る。新年を迎えてあらためて執念が燃え上がってきた。歌の続きでいうと「まだまだ探す気です」。(紀)