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9月1日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 663字|2008.9.1|社会 (society)|ハロハロ ]

 なぜ、フィリピンは貧しいのか——。筆者の目に止まった範囲でしかないが、最近、こんなテーマのエッセーをメールマガジンでよく見かける。一九五〇、六〇年代に東南アジアで近代化のトップランナーだったフィリピンが現在、近隣諸国に後れをとっている。その姿を直視し、自国の「なぜ」を真摯(しんし)に追究する有識者の発言。いずれも共通して、貧しいのは物質的な要件ではないと主張する。

 「貧富の差は国土の大小や天然資源の有無に基づくものでない」と米・テキサス州在住の比人医師。富裕な発展国では道徳、責任感、高潔性、骨身惜しまぬ労働、時間厳守や規律などが大多数の国民にとって生活の基本原則になっている。そこが貧しい国の国民とは対照的と分析する。フィリピンが貧しいのは天然資源が欠乏しているからではなく、国民が物事と正面から取り組む心構えと先進社会の基本原則に従う意志に欠けるからだと言う。

 著名な作家、F・シオニール・ホセ氏はこのほどマカティ市での講演で、この国でより深刻な貧困は、「精神の貧しさ」だと述べた。それはスペインの植民時代に導入された社会システムと庶民を搾取するエリートに起因し、現在もこの国は自国エリートの植民地と化し、「貧困の文化」が際限なく続くと持論を展開する。明快な論旨だが、とても数行では紹介できない。貧困からの脱却は民族主義革命と時間はかかるが教育の二つだと述べ、「我々は強い意志と勇気で立ち向かうしかない」という言葉で講演を終えた。 (濱)

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