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7月21日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 582字|2008.7.21|社会 (society)|ハロハロ ]

 歴史が浅いということは死者に引導を渡していないということではないか。だからフィリピンには死霊があちこちをうろついている。霊界の存在にさとい日本人から、住んでいる家屋やコンドで人の気配がして、誰もいないという話しをよく聞くし、フィリピン人の間では、「あそこには幽霊が出る」といった話は年中で、本気で信じている。私の親族代々の旧宅では、そこで死んだという日本兵の亡霊が時々、出現するそうだ。

 首都南郊のロヨラ・メモリアルパークに女性写真家を案内したら、あちこちであやしの存在を感じたという。中国風やパンテオン風の豪華な霊廟ではさほどでもないが、道ばたの敷石みたいなのが中、下流階層の墓標で、そのあたりでクラクラしたという。私は全く感じず、貧富の差ばかりが気になった。あの世に行っても差別されているような気がした。

 西ネグロス州の砂糖大農園で長年、カポ(労務者の頭)を務めた八十歳の老人が臨終の間際、「わしはこれからアメリカに行く」と言ったという話を聞いた。アメリカがパライソ(天国)の同義語と知って驚いた。昇天の途中で旅客機にでも乗ってしまいそうだ。そう言えば、フィリピン民族主義の英雄、ホセ・リサールもボニファシオも非業の死を遂げた。祖国の現状ではまだ浮かばれたとも思えない。死者が迷わず、安息の地に赴く国に早くなってほしいと痛切に思う。(水)

ハロハロ