ハロハロ
サンタアナの競馬場通いも三年を過ぎた。初々しかった場内レストランのウエートレスもいつのまにか子持ちになり、チップをねだる。競馬はもともと貴族の遊びといわれるが、名士や富豪の馬主席もあれば、サンダルばきの庶民が穴場に群がり、まさにフィリピン社会の縮図だ。かっ払いにも遭遇した。警備員に連れて来られた犯人はやせた老人で、百ペソ札を拳の中に握ったままだった。
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電子掲示板はもう、二年も壊れたまま。夕方になると照明が悪いので馬影が闇に沈んでしまう。穴場のおばさんたちはメリエンダになると、客をしり目におやつを食べに姿を消す。おかげで当たり馬券を買い損なったこともあるが、外れの確率が多いから得したと思うことにした。愛読していた予想新聞が最近、つぶれた。社長が急死した途端、発行停止というのもフィリピンらしい。
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競走馬は年々、良くなっているような気がする。だから買いは三、四歳の若馬だ。なにしろ十一歳の老馬が現役で、しかも五日間隔で出走してくる。本番のレースが練習代わりになっているから要注意である。日本からの種牡馬で「ジンガロ」という名前が出るが、東京では聞いたことがない。馬名には「黒船」「横綱」から「気まぐれ」「吉原」までいる。日本人の馬主名もちらほら。女あさりより馬券買いの方がマシといえばマシ。 (水)