ハロハロ
貧困、麻薬、暴力、欲望と裏切り、崩壊していく(新)日系二世たちの切ない絆(きずな)を美しく描き出す・・・。フィリピンの「いま」を凝縮したような宣伝文句。これに「全編現地ロケ」「好評につき続映決定」とくれば、自ずと「期待」が膨らむ。しかし、勝手に抱いた期待はわずか二時間後、シャボン玉がはじけるように淡くも姿を消し、木枯らしにも似た寒風が体の中を吹き抜けた。
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「太陽が弾ける日」(監督・横井健司、主演・小沢仁志)。上映開始時の入場者数は十二人、その後二人増えて計十四人と全座席の十分の一を埋めただけ。早くも「好評、続映」に?がちらつく。日本人の父親が誰かも分からぬ子供三人を、兄弟妹同然に育てた比人の「母」が病気で息を引き取るシーンから始まった。スラムに住む三人が肩を寄せ合いながら、いばらの道をどう歩んで行くのかとの楽しみをよそに、館内に響きわたったのは拳銃、自動小銃などの銃撃音と炎を上げる車の爆発音。
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ストーリーは裏社会で頭角を現した日系二世と地元麻薬組織との抗争を下敷きに、「貧困、麻薬、暴力(銃社会)」のフィリピンが抱える「不治の病」を見せてはいた。だが、最も関心を持った新日系二世をめぐる問題は、その現状と深刻さが銀幕から伝わることが最後までなく、銃撃音にかき消されるばかり。はしごを外された気持ちで座席を立ち、東京・六本木の映画館を後にした。夜の雑踏に紛れ込んだものの、冷えた気持ちが和むことはなかった。(道)