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2月12日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 548字|2007.2.12|社会 (society)|ハロハロ ]

 なじみのバーのママが入院したので見舞いに行った。エドサ沿いの私立病院で外見は立派だが、職員用エレベーター付近など裏に回ると汚れていて院内感染が心配になる。老母に付き添われたママは思ったより元気だったが、私の顔を見るなり、「まだ死にたくない」と訴えた。この国の普通の人間は医療保険など縁がなく、我慢に我慢して医者に駆け込む。手遅れが当たり前みたいなところがある。病気は死の恐怖と隣り合わせなのだ。

 中年の女医が入って来て、フィリピノ語でなにかママに言った。後で聞いたら、日本人の男が見舞いに来ているのだから「手術料は心配ないでしょう」と話し掛けたのだという。とんだ色男の役を演じてしまったが、この国では入院料が払えないと追い出してしまうという話もある。病院の信用を得るのに少しはプラスだったのかも。

 四苦八苦という。四苦は仏教でいう「生・老・病・死」だが、生きることを苦痛に数えるなど、仏教は全くアジア的貧困の産物である。その後、ママは「手術するほかない」と医師に宣告されたが、「今は費用が払えない」と告白して退院してしまった。別の病院で診断してもらい、やはり手術が必要という結果だったら再入院するという。話の終わりにまた、ぽつんと「まだ死にたくないよ」と言った。      (水)

ハロハロ