ハロハロ
クリスマス時季に聞いたフィリピン人の愛の掌編。視力を失った娘に優しい若者が求婚した。娘は「目が見えたら婚約するのに」と泣いた。ある時、知らない人から角膜を提供されて視力を取り戻した。ところが、その目で確かめた求婚者はめしいていたのだ。結婚を断わられて去った若者の置き手紙には、こう書かれていた。「どうか私の目を大切に」。
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交通事故で死んだ男の魂が霊媒に呼び寄せられた。
霊媒 「車にひかれそうになった人を助けたけど、自分が死んだのかい」
男 「そうなんです」
霊媒 「恋人がいたんだってね。さぞ悲しんだろう」
男 「いえ、彼女は喜んでいました」
霊媒 「何だって。そんなことがあるものか」
男 「本当です。私が身代わりになったのは彼女の好きな人だったんですから」
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男は一枚の古ぼけた写真を妻に隠していた。写真の中で、かわいい女の子がほほえんでいる。十代のころ道で拾って、どこのだれかは知らなかった。時々、写真を取り出し、「この子と出会っていたらきっと結婚していたのに」と遠い空を仰いだ。ある日、写真が妻に見つかった。すると妻が言った。「小さい時、一番気に入っていた写真を落としたの。あなたが拾ってくれたのね」(水)