「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

本日休刊日

11月27日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 429字|2006.11.27|社会 (society)|ハロハロ ]

 首都圏有数の人口密集地帯に住んだことがある。文字通り肩を寄せ合って暮らす人と人の距離は近く、路上にも人があふれていた。人があまりにもたくさんいるので、路上に犬の居場所はない。軒先の日陰で休もうとしてもすでに人という先客がいる。人との距離が縮まると、直ちに追い払われる。

    ◇

 それでも野生の血を忘れてしまった犬は悲しいかな、オオカミやキツネのように野では生きられず、人におびえながら残飯で命をつながざるを得ない。「無勢に多勢」の人口密集地で目にした野良犬たちは、ほぼ例外なく頭と尾を元気なく垂れ、人が近づいた分だけおどおどと遠のく処世術を身に付けていた。

    ◇

 この人口密集地には、犬肉を供する簡易食堂があり犬解体業者もいる。泥酔した男たちが「あいつをさかなにしよう」と野良犬を追い回す場面も目撃した。犬の処世術は、まさに凶暴な人からわが身を守る知恵で、人が予想以上に接近してきたら命をかけて牙をむくだろう。所変われば犬も変わるのだ。(酒)

ハロハロ