ハロハロ
先ごろ、東京から新幹線「のぞみ」に乗ったら、赤ん坊を抱いた若い女性と隣り合わせた。女性の両親が車内まで見送りにきている。白髪まじりの母親から「ご迷惑をかけるかもしれませんがよろしく」と、丁重なあいさつを受けた。後で分かったことだが連れているのは一歳二カ月の男児。大きな声を出したり、物を放り投げたりと聞き分けのない扱いにくい時期ではある。
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眠りから覚めた男児はむずかって暴れ、時折手足がわたしの体に触れる。そのたびに女性は「すみません」と謝る。そんなに気にしなくていいですよ、みんなこうして大きくなったんですから、と言うのだが、若い母親はますます恐縮している。三歳ぐらいになれば聞き分けできるようになりますよ、などと話した。
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フィリピンで子育てをすれば、安い費用で乳母を雇え何かと面倒をみてもらえて、母親たちはさぞかし楽だろう。しかし、そんな話をしてみてもせんないことだ。昨年、人口動態の目安となる合計特殊出生率がついに最低記録を大幅更新、年間死者数も出生数を初めて上回った。人口減時代の到来は随分前から叫ばれてきたが、予測より早く現実となった。若い母親たちにはこの先、奮闘してもらわなければならない。「胸を張って子育てを」と、胸中ひそかにエールを送った。(紀)