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10月31日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 600字|2005.10.31|社会 (society)|ハロハロ ]

 ガリー・ヴァレンシアノの甘美な声に乗って映画「ドバイ」は始まった。アラビア半島の大都市ドバイで働く海外就労者(OFW)の兄弟の物語だ。兄は運送店員、弟は大学出だが、昼はレストランの雑用係り、夜は流しのタクシー運転手。二人の願いはカナダで働き、やがて市民権を取ることだ。兄弟は一人の女性の愛を争い、やがて仲直りする。女性監督のロサ・キントスが前作「ミラノ」に続いて、OFWをテーマにした。

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 驚いたことにアラブ人との交流場面がほとんどない。観光用のラクダ使いが出て来ただけだ。出稼ぎのフィリピン人同士で浜辺で踊り、歌い、おしゃべりし、恋をする。いつも胸にあるのは故国の家族のこと。兄は友人の結婚式で、「自分たちは家族のために耐えて働いている」と大演説をぶった。暗い館内に鼻をすする音が広がった。異国の親を、きょうだいを思い出したようだ。

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 ピノイはどうやら国際派ではない。本当に、好きなのはこの島国だけのようだ。夏休み、米国から日本に来たフィリピン人のムコとビールを飲んでいたら「ダッド。俺は娘二人のために生きるよ」とポツリ。子どもの教育のために、故国に帰るのをあきらめたと言いたいのだ。ムコの楽しみは娘たちのビデオを撮ることと、故国の親兄弟と電話で長話をすること。時々、近隣のピノイ仲間でパーティーを開く。そして「自分の国でどうしてまともに暮らせないのか」とつぶやく。(水)

ハロハロ