ハロハロ
レック、二十三歳。二ノン(後見人)になってと頼まれ、引き受けた。「恋人とどこでデートするの」と尋ねて「教会で」と答えたのが気に入ったからだ。
よく晴れた土曜日の朝、ラグナ州の小さな教会に行くと、バージンロードの列ができていた。花嫁の父は土木作業員だ。バロンタガログに正装していたが、指の爪は真っ黒。花むこはマニラでウエーターをしている。孤児で、親代わりのおじさんも日焼けがすごい。
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花嫁の白いローブは貸し衣装だろう。とても窮屈で、暑そうだ。しかし、きらきらした若さが聖堂のすべてを輝かせている。
太った司祭は脳卒中でも病んだのか、よろよろしながら新郎、新婦に永遠の愛を誓わせた。はにかんだ二人は誓いのキスもほんの形だけ。なぜか十枚近くある婚姻証書に署名のボールペンを走らせた。アーメン。
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さあ、披露宴だ。車は間もなく丈の高い草原に入った。壊れかけた橋を渡り、ヤギの群れをよけ、走ること三十分以上。草の海の中の孤島のような集落に到着した。マッチ箱みたいな家
々から子供が出てくるわ出てくるわ。竹で組んだ、にわか作りの小屋で一同会食。あいさつも何もない。両親はにこにこ顔で終始無言。
新婚夫婦の月収合わせて六千ペソに満たない。家賃千ペソの両親の家に同居だ。「いいニノンになってやろう」。甘いかも知れないが。(水)