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6月16日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 462字|2003.6.16|社会 (society)|ハロハロ ]

 今年は映画監督、小津安二郎の生誕百年で日本ではさまざまな催しが予定されているようだ。七〇年台末期、私がパリ特派員だったころ、欧州では小津は「溝口」や「クロサワ」ほど有名でなかった。一般館で「東京物語」や「秋刀魚の味」が上映され、高級紙ルモンドが一面で評を載せて一躍、広く知られるところとなった。いまやヴィム・ベンダースのような心酔者が出ている。

 パリの映画館では老人割引で入場したお年寄りが多く、エンディングに涙を流しているのを見て感動した。古今東西、家族愛や人情は同じと、小津の主張の正統さを思い知らされた。

 一番すごいと思う作品は「戸田家の兄妹」だ。夫に先立たれた母親の老後を誰が面倒みるか。昭和十六年にこんな形で老後問題を突きつけた人はいない。小津には五十年後の現代日本が透視できていたのではないかと不思議な思いがする。だから今見てもぜんぜん古くない。半世紀前に今日的課題を提起しているから驚く。次に帰国の際、ビデオで名作をしのびたいと思う。 (紀)

ハロハロ