名所探訪「70sビストロ」
音楽を通し社会改革を
ケソン市プロジェクト2の「'70sビストロ」は、音楽家と非政府組織(NGO)活動家の集まるライブハウス。演奏される曲目はフィリピン語の歌詞で、民族音楽を取り入れた「オリジナル・フィリピーノ・ミュージック」。内容も貧困や環境破壊、先住民など様々な社会問題を扱っている。
六組のNGO活動家夫妻が共同出資して一九九二年十二月、NGO関係者たちの息抜きの場所としてスタートした。当初は掲示板などを備えただけだったが、そのうち社会問題を訴えるミュージシャンの音楽を聞きたいという要望が高まった。
オーナーの一人、ベリー・アイコさん(43)は、「七○年代の学生運動高揚期に青春を過ごした思いから店の名前をつけた。九二年にアキノ政権が終わったが、社会は何も変わっておらず、仲間内で一種の虚無感が広がった。そんな時、社会改革を訴え続けるミュージシャンの姿に勇気づけられた」と振り返る。
第一回目のゲストはノエル・カバゴンら男性ソロ歌手二人。その後グルーポン・ペンドンやジョイ・アヤラなど今も活躍する民族音楽の先駆的ミュージシャンが常連に。そして開店一周年記念として打ち上げたのが、九三年十二月にケソン市アモラントスタジアムで観客二万人を集めて開かれた「アモラント音楽祭」。三十組以上の音楽家が、先住民や女性の権利、環境問題など六つの社会テーマに分かれて十二時間にわたり熱唱、音楽とNGO活動が融合した。
最近、ビストロでは新しい試みを始めた。定期演奏に加え、月ごとに社会テーマを決めそれに合わせて地方のグループを招待したり音楽抜きの討論会を開くというもの。
環境月間に当たった四月に出演した「ディワタ」もボホール島に本拠を置く環境NGOの音楽グループだった。日本の尺八に似た長大な竹製フルートやミンダナオ特有の打楽器などを使った民族音楽にレゲエをミックスさせた「エスノ・レゲエ」で、耳に心地よい安定したリズムが観客の意識に大自然の営みを想起させた。
ミンダナオ島の先住民ヒガオノン族の出身という「ディワタ」のリーダー、エガイ・ディーさん(44)は「近い将来、ビストロのチェーン店をボホール島に作りたい」と話していた。チェーン店経営についてはラグナ州ロスバニョスにも希望者があり、実現する日は近いかもしれない。催し物など問い合わせは「'70sビストロ」(九二二・〇四九二)まで。(澤田公伸)