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恩讐を越えて共に平和願う 日比戦争遺族らが合同慰霊祭

2025/4/26 社会
バギオ市退役軍人記念公園で記念撮影する亀井亘さん(前列左から3人目)ら日本の戦争遺族らと同連隊退役軍人のエルネスト・ルイスさん(前列左端)、日系2世のフローラ・カルシンさん(前列左から3人目)、マガロン・バギオ市長(後列右から2人目)ら=バギオ市で4月20日午前11時ごろ、澤田公伸撮影

バギオ市で日比戦争遺族らによる合同慰霊祭が行われた

太平洋戦争中の1945年4月27日は、当時のマッカーサー将軍率いる連合国軍のルソン島再上陸と追撃によってバギオ市が日本軍から解放された日。この時、米軍と一緒に解放戦を戦った現地の先住民を主力とする比米陸軍ユサッフェ北ルソン第66歩兵連隊の退役軍人やその遺族たち、そしてバギオを撤退した山下奉文将軍が最後の拠点としたコルディリエラ奥地を守る防衛拠点を構築し比米軍と戦った日本の虎兵団(第19師団)を構成する部隊の一員として戦い、マウンテンプロビンス州など各地で戦死した日本兵らの遺族ら8人が20日午前、バギオ市内の退役軍人記念公園で合同慰霊祭を行った。フィリピンで戦死した日本兵の遺族らと戦争中に日本軍と戦った比人ゲリラ兵らの遺族らが、恩讐を越えて戦後80年目にして初めて平和を願う追悼集会を実現させた。

 この日の合同慰霊祭にはフィリピン戦で亡くなった日比米他全ての人を慰霊する観音像を愛知県で奉賛する遺族会「比島観音奉賛会」の亀井亘会長(82)と戦没日本兵の遺族ら7人、比米陸軍ユサッフェ北ルソン第66歩兵連隊遺族会のテレサ・ポマール会長を筆頭とする遺族会員ら、そしてマガロン・バギオ市長や同連隊所属の退役軍人で98歳になるエルネスト・ルイスさん、さらに戦争を体験した日系2世のフロラ・カルシンさん(85)らが参加した。参加者は約200人に達し、慰霊祭に必要な備品の調達費用などを一部支援した国際交流基金マニラ文化センターの鈴木勉所長も駆け付けた。

 慰霊祭で挨拶したマガロン・バギオ市長は「マニラ市街戦の慰霊碑を最近見学したが、そこの展示でも多くの犠牲者が出ていることがよくわかった。太平洋戦争で戦った日比の子孫たちが平和を願って一同に会することはとても重要だ。我々は両方とも戦争の犠牲者なのだから」と参加者に訴えた。

 また、父親が同州ボントック町で戦死した亀井亘さんは日本式の卒塔婆6本や日本酒がならぶ仮設祭壇を前にして「おーい、戦没されました虎兵団など日本将兵の皆さん、在留邦人のみなさん、そしてフィリピンの将兵のみなさん、きょうは皆さんへの慰霊祭を行いたいと思います」と大声で叫び、戦没した日比両国の人々の霊魂に語りかけながら、慰霊の言葉を捧げた。また、日本の戦争遺族たちも次々に壇上に上がり故人の冥福を祈った。

 その後、第66連隊遺族会の人々が中心となり、用意された菊の花束を各自持ち、公園の背後にある同連隊の部隊兵士たちの名前が一人ずつ書かれた壁面に各々向い、自分の祖父や父親の名前を確認しながらその下に菊の花を静かに捧げた。

 慰霊祭には16歳の高校生だった1988年からバギオに住み、現在は北ルソン日本人会の代表を務める佐々木裕司さん(53)の姿もあった。佐々木さんは「自分が住み始めた当初、日本人だとしてバギオの人から辛く当たられたこともあった。しかし、今日、日本とフィリピンの戦争遺族たちが交流する様子を初めて見て、感謝と感激しかない」と喜びを噛みしめていた。

 

 ▽涙を流す日比の参加者ら

 午前中の慰霊祭の後、参加者たちはバギオ市キャンプアレンにある退役軍人事務所に会場を移して交流会を行った。まずカニャオと呼ばれる現地の先住民イバロイの人々の儀式が行われ、いけにえの豚を前に日比の戦没者遺族たちがドラなどの伝統楽器の演奏に合わせて一緒に円舞を行った。その後、参加者たちは第66連隊の足跡を描いた比ドキュメンタリー映画「ノーウェア・イェット・エニウェア」(2006年製作、デイブ・モンテス監督)を鑑賞したほか、戦没者や退役軍人だった祖先を追悼するためにローソクをそれぞれ灯した後で、日比の遺族たちが父親や祖父にまつわる思い出を語り合い、歌を紹介し合う交流会が行われた。

 交流会では比人参加者が父から激戦地だった「ベサンパスの戦い」で、66連隊の兵士たちが「人間はしご」のごとく肩車を何重にも作りながら断崖絶壁の山を乗り越えたという映画の中のエピソードを実際に聞いた時の様子をシェアしていた。また、ある日本人遺族も自分の父親が率いた日本軍部隊の弾薬が尽き、突撃攻撃から戻ってきた際に上官から敵前逃亡の罪を軍法会議で言い渡され処刑された事実を、後に戦友の人たちから聞いたというエピソードを話すと、比人遺族たちは沈痛な表情を見せていた。

 交流会に参加したビオレタ・ガリエテスさん(53)は「慰霊祭に出て2年前に亡くなった元兵士だった父親のことを思い出して涙が出た。父や祖父はバタアン戦やマンカヤンなどで日本軍と戦ったと話していたが日本の遺族の方からも話が聞けて良かった」と話していた。

 また、慰霊祭と交流会に参加した伊原来美さん(21)はバギオ市にある環境系NGOでインターンとして働いていた。伊原さんは「慰霊祭や映画の内容など知らない事ばかりでなかなか情報を消化しきれていない。でも日比の戦争遺族の人々が一緒に参加している様子を見ているうちに、なぜか涙が出てきてしまった」と話していた。

 合同慰霊祭をユサッフェ北ルソン第66連隊遺族会と一緒に組織した日本人映画監督でNPOサルボンを主宰する今泉光司さん(65)はバギオなどを舞台にアジアパシフィック国際平和慰霊祭を過去に7回実施してきた。今泉さんは「66連隊遺族会の方々と初めて一緒に働かせてもらったが、彼らは孫の世代も含めて皆が一生懸命参加しているので驚いた。フィリピン戦で日本軍と最後に戦って降参させたのは北ルソンの山岳民ゲリラ隊だったという強い自尊心もあるんだと思う」と感慨深げだった。(澤田公伸)

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