インドネシアから「奇跡の帰国」 約15年ぶり、死刑判決受けたベロソさん
死刑囚としてインドネシアで服役していたベロソさんが約15年ぶりに帰国。成長した息子らと再会
インドネシアへの麻薬持ち込み容疑で2010年に逮捕、同年に死刑判決を受けながら、約15年にわたる政府の交渉によって、異例の死刑回避と比への移送が決定したメリージェーン・ベロソさん(39)が18日午前、マニラ国際空港に到着した。その後、ベロソさんは移送先の首都圏マンダルーヨン市の女子刑務所で両親、大きくなった2人の息子と再会。花束を持って迎えた息子たちを涙を浮かべながら抱きしめた。司法省矯正局のカタパン局長は「ベロソさんの人生における悲惨な1章の終わりを告げる帰国だった」とし、手錠などの拘束具なしで移送されたと説明した。
マルコス大統領は同日に声明を出し、「インドネシア政府およびベロソさんを支援した全ての人に感謝する」と表明。「ベロソさんの安全と福祉を保証する」と宣言した。
2011年、インドネシア最高裁はベロソさんに死刑判決を言い渡し2015年4月にも執行される予定だったが、同月、麻薬を隠したスーツケースをベロソさんに渡したとされるリクルーターが比当局に出頭したことで、土壇場で延期された。
ベロソさんは、生活に苦しむ家族を支えるため海外就労を選択し、中東では性的虐待を経験しながらもエージェントを頼りに東南アジアで就労先を探していたところ逮捕され、「人身売買の犠牲者」として比国内で同情論が高まった。ノイノイ・アキノ元大統領、マルコス現大統領がインドネシア大統領に恩赦を要請したほか、ボクシング元世界6階級制覇王者のマニー・パッキャオ元上院議員もインドネシア政府・議会に恩赦を嘆願するなど、国家的な関心事となってきた。
先月末にインドネシアから死刑制度のない比への引き渡しが政府間で合意されたことで、死刑回避が決定。ベロソさんは「これは奇跡。いつも神様にもう一度家族と一緒に過ごせるよう祈っていた」と語っていた。
▽「国内で恩赦を」
女子刑務所に移送されたベロソさんはまだ受刑者となっている。記者団に対し、「母国に帰って来られてとてもうれしい」と喜びを表した上で、「私は犯していない罪で15年近くインドネシアで服役した。家族と一緒に暮らせるよう、マルコス大統領には恩赦をお願いしたい」との望みを口にした。ベロソさんを支援してきたオライラ弁護士は「クリスマスには自由になれるよう、大統領には特赦の決断をしてほしい」と述べた。
海外比人就労者(OFW)の人権問題に取り組む「ミグランテ・インターナショナル」は18日に声明を発表し、家族のコメントを紹介。母セリアさんは「比内外の人々と支援団体の助けで、娘は死刑を免れただけでなく、フィリピンに帰って来られた」と感謝を表した。
司法省は現在、ベロソさんがインドネシアで服役した14年以上の年月を、比国内での服役期間として算入し、仮釈放の根拠となるかなどについて検討を進めている。(竹下友章)