「国民の金を私物化した」 サラ氏へさらに弾劾状提出
左派系市民団体連合バヤンら74団体の代表らがサラ氏に対する弾劾状を提出
首都圏ケソン市の下院で4日、市民団体代表ら74人がサラ副大統領の弾劾を求める告発状を下院事務局に提出した。告発人には、左派系市民団体連合バヤンの代表レナト・レイエス氏、バヤン名誉代表で次期上院選に立候補表明しているテオドロ・カシニョ氏、労働運動団体のKMU(五月一日運動)の事務局長で上院選に立候補しているジョロメ・アドニス事務局長、教職員組合政党ACTティーチャーズのブラディメル・クエトゥア名誉代表、女性政党ガブリエラのエメレンシアナ・デジェスス名誉代表、フィリピン農民運動(KMP)のダニン・ラモス代表、ジャーナリストで戒厳令下で民族民主戦線を設立し、投獄された経験のあるサトゥル・オカンポ氏など、市民社会活動をけん引してきた面々が名を連ねた。
この告発状は下院でサラ氏の疑惑追及の急先鋒として知られるフランス・カストロ議員(ACTティーチャーズ)ら3議員が裏書きし、下院のベラスコ事務局長に午後3時過ぎに提出。リベラル系アクバヤン党の承認で市民らが2日に提出した弾劾告発に続くが、今回はより幅広いセクターの代表が参加し、告発者数は前回の5倍以上に上った。
副大統領室の機密費問題だけでなく、超法規的殺害への関与疑惑から大統領暗殺発言まで20件以上の訴因を列挙したアクバヤン主導の告発状とは異なり、今回の告発理由は①副大統領、教育相としての機密費不適正使用②会計報告書偽装③下院調査拒否――の三つ。事実関係が下院調査によって一定程度確定しているものに絞り込まれた。
会見でカシニョ氏は「副大統領による5億ペソ以上の機密資金の不適正使用、特に、22年末のわずか11日間での1億2500万ペソの疑わしい出費は、国民の信頼に対する重大な裏切り。会計検査院は、これらの支出は非常に疑わしく、機密資金の使用に関する法律やガイドラインに準拠していないと警告している」と指摘。会見後、告発者らは並んで「サラ氏を弾劾せよ」と声を上げた。
告発人の1人であるクリストレイ・アルバソン准教授(国立ポリテクニック大教員組合事務局長)は、弾劾の理由について、まにら新聞に対し「サラ氏は巨額の資金を副大統領室・教育省の機密費として不適正に使用した。数億ペソに上る資金は、庶民の暮らしを守り、貧困層を助け、インフラを整備し、より貧困世帯への教育機会の拡大にも使えたはず。国民に奉仕する使命を持つ副大統領・教育相として、これは明確に国民の付託を裏切る行為だ」と説明。父ドゥテルテ氏と同様に超法規的殺害問題関与の疑惑や、大統領暗殺発言との関わりについて「その問題はあるが今回は別件」とし、政局色の強い問題をわきに置き、「政治とカネ」問題に絞り込んだことが、農民、学生、少数民族、教会まで多様なグループの連帯行動につながった要因だと説明した。(竹下友章)