「ドゥテルテ家の負の遺産許すな」 サラ氏弾劾の告発状提出
サラ副大統領弾劾の告発状提出。「ドゥテルテ家の汚職と殺害の遺産の存続を許すな」
社会民主主義政党アクバヤンは2日、機密費の不適正利用などを理由にサラ副大統領の弾劾を求める告発状を複数の市民が下院に提出したと発表した。告発人には、テレシア・デレス元和平プロセス担当大統領顧問、故ノイノイ・アキノ元大統領の甥フランシス・アキノ氏、超法規的殺害犠牲者の遺族、スカボロー礁への民間補給任務に参加したカトリック教会のロバート・レイエス神父など様々な人物が名を連ねた。
弾劾を求める告発状は下院議員または下院議員に承認された市民が提出できるが、今回はアクバヤンのペルシ・センダニャ下院議員が承認。同議員は声明で「サラ副大統領に対して出された最初の歴史的弾劾請求を承認した。サラ氏は権力の乱用と国庫略奪で弾劾に値する」と非難。さらに「この運動は彼女の父親(ドゥテルテ前大統領)による麻薬戦争で発生した重大犯罪を追及する動きとも関係する。ドゥテルテ家の汚職と殺害という負の遺産の存続を許してはならない」とした。
デレス元大統領顧問は「副大統領室は、いまや暴力的な論理、私腹、特権、不処罰の盾に成り下がった。彼女が権力を握り続けることは、行政規律と法の支配のために立ち上がる全ての比人への侮辱だ」と非難した。
告発状の提出には、麻薬戦争批判の急先鋒として知られ、麻薬取引関与の罪(後に無罪判決)で6年半の収監を経験したデリマ元上院議員も広報担当として同行。会見で同氏は「これは単なる法的闘争ではなく、公務員が品位と尊厳を取り戻すための道徳的闘争だ」と強調した。
告発状は「憲法違反と汚職」として、1億2500万ペソの2022年副大統領室機密費に加え、計6億5000万ペソ以上にのぼる23年副大統領室および教育省機密費の使途に関する問題をサラ氏が説明できていないほか、下院委員会への出席拒否、ダバオ市長時代の27億ペソの機密費の不適正使用などを挙げた。また、「賄賂と不正蓄財」として、2007年~15年までにサラ氏の個人口座に1億1100万ペソ、父親のドゥテルテ氏との連名口座に数億ペソの預金が蓄財されていたことや、麻薬ディーラーからの賄賂受け取りへの関与などを挙げた。さらに「その他の重大な犯罪」として、ダバオ市長としての超法規的殺害への直接関与、公共の場で平静を失い大統領らの暗殺計画を認めたことなどを列挙した。
ベラスコ下院事務総長は、下院の散会日が20日に迫るなか、今月中に告発状が委員会で受理される可能性は低いとしているが、来年以降に告発に対する審議が開かれる可能性は排除していない。
弾劾を規定する憲法11条によると、告発状が提出されれば、下院は10審議日以内に議事事項に組み入れ、その後3審議日以内に委員会に送ることになっている。委員会の過半数が賛成すれば本会議に送られるが、採択には議員の3分1以上の賛成が必要となっている。下院で採択された場合には、上院に弾劾裁判所が開設される手続きとなっている。
1986年のアキノ政変(エドサ革命)以降、エストラダ元大統領を含む4人が弾劾裁判により罷免されているが、副大統領が罷免された前例はない。(竹下友章)