「デス・スクワッドを捜査」 ドゥテルテ氏証言で国家警察
ドゥテルテ氏が処刑団「デス・スクワッド」の存在を議会で認める。国家警察は捜査すると発表
ドゥテルテ前大統領が上院公聴会で、自身のダバオ市長時代に「処刑団」として麻薬関連容疑者への超法規的殺害を担ったとされる自警団「ダバオ・デス・スクアッド」が存在していたことを公式に認めた。これを受け、国家警察のファハルド報道官は10月30日、マルビル警察長官が「デス・スクアッド」につながりがあるとされる麻薬関連の未解決案件の「抽出」を命じたことを発表した。ファハルド報道官はまた、上下両院で開かれている超法規的殺害に関する公聴会で提示された証言についても「情報として収集しており、捜査に役立てる」とした。
ドゥテルテ氏は28日、「警察が直接手を下せば問題になるため、デス・スクアッドを利用した」と認めた上で、ロナルド・デラロサ現上院議員を含む、自身の政権下で任命した4人の警察長官が「(かつて)デス・スクワッドを率いていた」と証言した。 ドゥテルテ前大統領を国際刑事裁判所(ICC)に告発した一人であるアントニオ・トリリャネス元上院議員は同日、超法規的殺害に関する上下両院の証言の書き起こしをICCに提出したと発表。「この記録も後にICCによる審判に活用されるだろう」とした。
一方、憲法の規定で独立委員会として設置されている人権委員会は声明で、「上下両院の調査は、最終的に全ての超法規的殺害の犯人に責任を取らせることにつながる」と歓迎を意を表明した。
また、「適切手続きに従うより、容疑者を殺したほうがよい」「容疑者を挑発して戦闘に仕向け、(殺害ではなく)『無力化』したという形にして正当化した」とのドゥテルテ氏の証言を引用し、「この証言は人権委員会による2022年報告書が指摘した特徴と一致している。こうした行為は法執行官の間に不処罰の文化を育み、市民的・政治的権利に関する国際規約にも違反している」と非難した。
元国家警察高官で、長年ダバオ市警察でドゥテルテ氏の右腕として働いていたロイナ・ガルマ氏は先月の下院公聴会で、ダバオ市では麻薬取引容疑者殺害に報奨金制度が作られており、ドゥテルテ前大統領が同制度を全国に広めるよう指示していたと証言。バスケス司法次官は「下院からの報告が提出されたら捜査、立件する」と述べていた。
ドゥテルテ前大統領政権では麻薬捜査中の殺害事件は政府公式でも6000件以上。合計20年以上にわたるダバオ市長時代を含めると、犠牲者は数万に及ぶと人権団体らは指摘している。(竹下友章)