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9月10日のまにら新聞から

「ドゥテルテ氏も共犯の可能性」 キボロイ師逮捕で下院議員ら

[ 1356字|2024.9.10|社会 (society) ]

ドゥテルテ前大統領の盟友である教祖の逮捕を受け、同教団の管理者である前大統領への法的責任問題が浮上

 ダバオ拠点の新興宗教団体「イエス・キリストの王国」(公称信者数600万人)の教祖で、ドゥテルテ前大統領の「スピリチュアル・アドバイザー」として知られるキボロイ師が8日に逮捕されたことを受け、下院議員2人が9日、「キボロイ師の教団施設を含む不動産の管理責任者を務めているのはドゥテルテ氏だ」と指摘し、キボロイ師をかくまった疑いがあるとして前大統領の法的責任に言及した。一方、ドゥテルテ氏は自身が管理する教団施設を破損されたとして、アバロス内務自治相やマルビル国家警察長官らを相手取りダバオ地裁に訴状を提出した。

 下院行政規律・公的責任委員会のジョエル・チュア委員長は9日、「ドゥテルテ前大統領が教団施設の管理者を務めている事実を鑑みると、ドゥテルテ氏はキボロイ師の逮捕と無関係と決め込むことはできない。同氏はこのスキャンダルの中心人物の一人であり、国民に明確な説明をすべき責任がある」と指摘した。

 またジル・ボガロン下院与党院内総務補は、「教団施設の管理者であるドゥテルテ氏は、少なくとも容疑者蔵匿のかどで法律上の責任を負っている」と指摘。法律家でもある同議員は個人的見解としながら、「ドゥテルテ氏は共犯の定義に当てはまる可能性がある」と言及した。

 また同議員は、元検察官であるドゥテルテ前大統領の弁護士資格剥奪の可能性にも言及。「もしドゥテルテ氏が故意にキボロイ師をかくまったことが証明されたら、弁護士資格の剥奪の根拠にもなりえる」とした。

 アバロス内務自治相は9日、記者団に対し、ドゥテルテ前大統領による提訴について、「その種の提訴はたくさんある。私は警察を信頼している」とした上で、「人(容疑者)をかくまう行為は重大な問題であり、責任を負うべきだ」とけん制した。警察は強制捜査の際に、教団施設内に地下トンネルを掘削している。

 キボロイ師は未成年への性的暴行や人身売買の疑いで4月に逮捕状が発付され、先月24日から国家警察が30ヘクタールの教団敷地への強制捜査を開始。強制捜査開始から逮捕まで2週間以上かかっていた。

 ▽投降前の交渉

 キボロイ師とその他4人の幹部らの逮捕を目的とした強制捜査には国軍職員も参加。同師らは国軍の情報担当職員に投降し、軍用輸送機C130で首都圏に移送された。

 マルコス大統領は9日、記者団に対し、警察がキボロイ師の潜伏先に接近した際に24時間以内の投降を求める通告を出し、キボロイ師が8日午前9時までに警察への投降通告を受け入れたことを明らかにした。

 さらに、キボロイ師の陣営が「過去2~3週間にわたって投降条件に関する交渉を持ちかけてきた」と述べ、その中で、人身売買などで指名手配されている米国に引き渡さないという条件を提示されたことを明らかにした。

 その上で、「逃亡犯に海外への引き渡し条件を決める権利はない」とし、拒絶したことを報告。一方で、国内での刑事訴追手続きが優先されるため「米国への引き渡しは当面実現しないだろう」との見通しを示した。

 イエス・キリストの王国は3月に議会からの証人喚問に反対する抗議集会を開催。マルコス政権への批判が展開された同集会には、ドゥテルテ前大統領、娘のサラ副大統領も出席していた。(竹下友章)

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