24年予算を違憲立法審査へ 4500億ペソに膨張した予備費で
大幅増額された「プログラム外予算」を巡り、ピメンテル上院議員が2024年予算法の違憲立法審査の申し立てに動き出す
上院のココ・ピメンテル野党院内総務(PDPラバン・ピメンテル派)は3日、昨年12月20日に成立した5.7兆ペソの2024年予算法について、近く最高裁に違憲立法審査を申し立てる予定だと明らかにした。同議員は、議会によって4495億ペソ増額された「政府プログラム外の予算」の合憲性を疑問視。現在、申立書の最終確認をしている段階という。
下院のエドセル・ラグマン議員(野党・自由党)もプログラム外予算について「1日に発効した今年度予算法に盛り込まれているプログラム外予算は、大統領承認の政府当初案にあった2819億ペソを大幅に超過しており、憲法上の問題がある」と指摘。憲法6条25項(1)は「政府運営のために大統領が提案した予算の割り当てを、議会が増額することはできない」と規定しており、この条項が違憲立法審査の争点一つとなっている。
さらに、ピメンテル議員はマルコス大統領が2024年予算法案に対し、即時制定権を行使したことも問題視。「毎年制定される予算法は緊急制定の対象になりようがない」と主張した。
比議会は3読会制をとっており、憲法6条26項(2)は「上下両院はそれぞれ別の日に3回読会を行い、可決の3日前に議員全員に法案の印刷を配布しなければ可決できない」と原則を定める。その例外が大統領による即時制定法案としての認定だが、同条項は「災害や緊急事態に対応するため即時制定が必要だと大統領が認定した場合」を例外としており、災害や緊急事態に該当する状況があったかももう一つの論点となる。
ピメンテル議員は「第2、第3読会が同じ日に開かれたため、われわれは制定されるまで最終条文の全文を読み込むことができなかった。いま全文が公開されたため、疑問を呈するのにいい時機だ」と指摘。裁判の見通しについては「最高裁がプログラム外予算を違憲と判断した場合、問題箇所の修正の上で施行される。もし予算法制定自体が無効と判断された場合は、昨年の2023年度予算法が適用される」とした。
憲法6条25項(7)は、会計年度末までに議会が予算法を可決しなかった場合、可決まで前年度の予算法が再発効すると規定している。
▽ポークバレル疑惑も
この動きに対し、パガンダマン予算管理相は2日に声明を発表。プログラム外予算について、「承認された政府財政プログラムの外の予備費であり、想定外の支出や優先プログラムや事業のために活用される」とし「議会のためにも提案され、議会から承認される予備費だ」と説明した。
プログラム外予算は、議員による国費を用いた利益誘導(ポークバレル)としても悪用されるのではないかとの疑問も呈されている。
同相は「予備費は財源の裏付けのある5兆7676億ペソの今年度予算には含まれていない」と説明。「従って、プログラム外予算は自動的に配分されるのではなく、見込みを超える政府収入や新税などによる収入、借款や無償資金協力の実施があった場合にのみ配分される」と述べ、「見込み以上の収入があった場合でも、政府各機関は予備費の使用の前に必要書類を提出する義務がある」と透明性を強調した。
また、憲法6条29項(1)の「立法によって割り当てられた場合を除き、国庫から金銭は支出されない」という条文を引用し、「予算配分の上限に関する審議や承認は議会の権限下にあることは明らかだ」との見解を示した。
その上で「どのような申し立てや挑戦を受けようとも、予算管理省は承認された財政プログラムの範囲内で予算を執行する」と宣言した。(竹下友章)