万聖節(ウンダス)を迎えた1日、しきりに雨が降り注ぐ中、首都圏マニラ市の南部墓地には故人をしのぶため多くの人が集まった。警察発表では1日の午前6時~午後4時までの入場者が約30万5000人に上った。入り口前の道路は歩行者に開放され、お供え用の花やろうそく、軽食のほか、雑貨を売る店も立ち並び、墓地とを往復する人の姿も見られた。
棺の前で食事をしたり歌ったり、家族で団らんするほか、静かにろうそくを見つめて喪に服する人もおり、それぞれの形で万聖節を過ごしていた。特に今年は入場に際し、新型コロナのワクチン接種の有無や年齢制限が設けられていないため、子どもの姿も戻ってきていた。
屋根のついた棺の前で親族8人と雨宿りをしていた比人女性は「誰の墓か分からないけれど屋根をお借りしている。さっきまで知らない家族も一緒に雨宿りしていて仲良くなった」と、雨ならではの交流を楽しんでいた。
首都圏各地から親族13人で集まっていたルイス・ベルガラさんは「今年はやっと小学生の子どもたちも来られてうれしい。故人の前では楽しんでいるところを見せるのが一番」と笑顔を見せた。数年前に亡くなった父も眠っており「思い出話に花を咲かせて、父が好きだった曲を皆で歌っていた」という。
夫婦でロウソクに火を灯していたエドウィン・ロブレスさんは「ほかの親族は事前に来ていて、棺や周りをきれいにしてくれた。今年は連休に休みを合わせて皆で旅行に行ったみたいだ」と話した。棺にはロブレスさんの祖父母やおじ、きょうだいのほか、2006年に15歳で亡くなった姪も眠る。その母親にあたるロブレスさんの姉は日本人男性と結婚しており、ロブレスさんも「日本語を学んで少し話せる。何年経っても姪の笑顔が懐かしい」とはにかんだ。
墓地内には警察や赤十字、近隣のバランガイ(最小行政区)のボランティアらが警備や緊急対応のために配備されていた。タバコやライター、鋭利で危険とみなされたものが複数没収されていたものの、マニラ署の警官は「大きな事故や事件は起きておらず、人は多いが秩序は保たれている」と話した。(深田莉映)