エジプト経由で比人退避へ イスラエルの「大規模攻撃」控え
イスラエルが大規模攻撃を示唆する中、比政府は在ガザ比人のエジプト経由人道回路からの保護、救出を準備
イスラエルは13日までに、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治政府ガザ地区に住む民間人が「24時間以内に同地区南部に退避する必要がある」と国連に通告した。北部への大規模攻撃が予想されるなか、比政府は92人に増加したガザ在住比人の帰国希望者を人道回廊を通じてエジプト側で保護、送還する準備を進めている。
イスラエルの国連への通告に先立ち、在比イスラエル大使館のブズガン次席公使は12日午後に開いた会見で、比国民に対し「もしガザに親戚や友人がいるなら、一刻も早くそこから離れるように伝えてほしい」と要請。「イスラエルはハマスを止めるために、『屋根をノックする必要がある』」と発言し、大規模空爆の実施を示唆した。
同次席公使はまた、ハマスがガザの重要インフラで「女性や子どもを人間の盾として利用している」と指摘。「この事実はそうした人々が死亡することを理解するために必要なことだ。もし逃げる機会があったら逃げてほしい」と述べ、民間人を巻き込むことを前提とした攻撃を近く実施することを強く示唆した。
比外務省は13日、米国・イスラエル・エジプトの3カ国で協議されているガザのエジプト側境界に人道回廊を設置する案が実行された場合に備え、在エジプト比大使館が境界にチームを派遣していることを明らかにした。70人から92人に増えたガザ在住の帰国希望比人は境界で保護し、カイロに移動、比政府の予算で手配した航空便で帰国させる予定だ。
在ヨルダン比大使館は最新のガザ在住比人数を発表。137人だった比人のうち、数人は攻撃前にガザを離れており、現在は観光客も含め131になっているとした。
比外務省は同日、ハマスとイスラエルの武力衝突で3人目の比人の死亡が確認されたと発表。死亡したのは介護に従事する西ネグロス州出身の49歳女性。ハマスの奇襲で少なくとも260人が殺害、多数が拉致された音楽フェス「スーパーノバ」に参加していた。また、行方不明の比人は4人に増加した。
英字紙インクワイアラーによると、最初に死亡が確認された2人は、パンガシナン州出身の女性看護師アンジェリン・アギレさん(33)とパンパンガ州出身のポール・カステルビさん(42)。アギレさんはハマスの攻撃で死亡する前、70歳の患者を置き去りできないとし退避を拒否していた。また、カステルビさんの遺体が発見される前、ハマスの戦闘員に拉致される姿が目撃されていたという。
▽ハマスをテロ組織指定へ
アニョ国家安全保障担当大統領顧問は13日、比政府がハマスをテロ組織として指定するとの方針を発表した。同大統領顧問は「(ハマスの攻撃は)イスラエルの民間人を対象にした野蛮なテロ行為であり、イスラエルは比人を含む1200人以上の命を奪い、3千人以上の負傷者を出した攻撃から自国を防衛するためのあらゆる権利を有する」とし、イスラエルを支持する立場を鮮明にした。(竹下友章)