「南シナ海の事件」に懸念 COC交渉、マニラ市で再開
棚上げになっていた南シナ海行動規範締結交渉がマニラで正式に再開された
首都圏マニラ市で22~24日にかけ、比がホスト国となり第40回南シナ海行動宣言(DOC)の実施に関する合同委員会会合が開かれ、数年間棚上げになっていた南シナ海行動規範(COC)の交渉が本格的に再開された。比外務省によると、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の各政府の実務者代表が参加した同会合で、比は「最近南シナ海で生じた事件」について懸念を表明した。
比代表は会合で「南シナ海で、最近生じた事件や問題は信頼を損ない、緊張をエスカレートさせ、地域の平和・安定・安全保障を脅かしている」と懸念を表明。比が南シナ海に持つ「正当な比の主権(的権利)」を主張する一方で、「協議を進展させるような環境を整える必要がある」と指摘し、COC早期締結に向けた取り組みを加速させる意向を表明した。
外務省は、COC締結について「南シナ海南沙諸島アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)で発生した中国海警局船による比巡視船への放水銃発射事件の再発防止も目的に含まれる」と説明した。
低潮高地であるアユギン礁の実効支配を維持するため、比が1999年から意図的に座礁させている海軍艦への補給任務に向かう比船艇に対し、中国海警局は今月5日、放水銃を発射して妨害。補給任務を中断に追いやった。22日に再度、補給任務が実施された際は、比海軍が後方に待機したほか、米軍の偵察機が妨害のために集結した海警局船を上空から監視していたとAP通信は報じている。
米国を巻き込んで軍事的緊張が高まるなか、力による威圧でなく合意されたルールにより紛争を解決するCOCの必要性も増していた。
DOCと異なり当事国間での法的拘束力を有するものになることが見込まれているCOCだが、COC締結への議論の進めるためのガイドラインが採択された7月のASEAN外相会合=インドネシアで開催=の後、法的拘束力を持たせるかどうか、地理的な適用範囲はどこまでかという基本事項がまだ一致していないことが明らかにされた。
ASEANと中国は2002年、沿岸国に現状変更の自制などを求めるDOCを採択したが、実効性に欠け、各国の実効支配する海洋地勢の開発が進められた。そのため、より拘束力のあるCOCの策定に向け2013年から交渉を開始、17年の中国ASEAN外相会議で枠組み合意したが、その後交渉は停滞、棚上げ状態となっていた。(竹下友章)