座礁艦への補給成功 日本供与の巡視船など派遣
PCGが民兵船、中国海警局船の妨害を受けながらもアユギン礁への補給に成功
比沿岸警備隊(PCG)巡視船2隻が22日、海軍がチャーターした補給ボート2隻と共に、南シナ海南沙諸島アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)で比海軍が詰め所とする座礁海軍艦BRPシエラマドレへの補給任務に向かい、同日午前9時7分に任務を成功させた。日本から政府開発援助(ODA)を通じ供与された44メートル級巡視船BPRカブラ、BRPシンダガンが派遣された。西フィリピン海(南シナ海)に関する政府タスクフォースは「中国船の妨害にもかかわらず成功させた」と報告。また、「作戦中、比海軍艦も待機していた」ことを明らかにした。
自動船舶識別装置(AIS)の情報からリアルタイムで船舶の運航を分析しているスタンフォード大のレイモンド・パウエル氏(元米空軍大佐)によると、同礁の約30キロ西にあり中国が実効支配するミスチーフ礁から、海洋民兵船とみられる中国船4隻がアユギン礁付近に接近。そのうち3隻が午前9時ごろ環礁であるアユギン礁の入り口に隊列を組み、比船艇の進路に立ちふさがった。その他にも、7隻の中国民兵船が接近した。
また、中国海警局船がBRPカブラに急接近したことも確認された。AIS信号を消している海警局船もあったため、4~5隻の海警局船がアユギン礁に集まっていた可能性がある。
海警局船は2月には補給ボートを護送する比巡視船に火器管制レーダーを照射したほか、今月5日には補給ボートに放水銃を発射して補給を中断させており、明確な「武力行使」に当たらないグレーゾーンで力の行使を強めている。
中国の黄渓連大使は22日、記者団に対し「食料や水の補給に関しては『特別な取り決め』があり、これまで問題になったことはない」と述べた。
比は1999年、海洋進出を強め始めた中国に対抗するため、第二次世界大戦期に建造された揚陸艦BRPシエラマドレを意図的に座礁させ実効支配を強化。アユギン礁を自国の管轄権下と主張する中国は、座礁を不法行為として撤去を要求しているが、比米相互防衛条約により比軍への武力攻撃は条約発動の条件を満たし得るため、直接手を出せない状況もある。
中国は座礁艦への食料や水の補給は「人道的措置」として監視のもと容認しているが、老朽化が進む同艦修繕・強化のための物品の補給は許容しないという姿勢を取っている。5日の任務では食料などを積んだ補給ボートが妨害されたため、座礁艦配置職員の生活物資が底を尽きかけていた。(竹下友章)