米中が支援競争 台湾に近いバタネス州
比最北のバタネス州に対し、米国は通信インフラ整備、中国は農業支援申し出る
台湾海峡を巡る米中緊張が高まる中、フィリピン最北に位置し台湾に最も近いバタネス州に米中が競って支援を申し出ている。マリルー・カイコ知事が26日、バタネス州設立240周年式典のスピーチで明らかにした。
27日の英字紙インクワイアラー電子版によると、アメリカ国際開発庁と比情報通信技術省が共同で、米宇宙開発企業スペースXの提供する衛生通信網「スターリンク」を州都バスコ市で利用できるよう整備する計画があることを明らかにした。またカイコ知事は、在比米国大使館職員が来月にバタネス州を訪問し、「いい知らせを発表する」と述べた。
一方で同知事は、「北イロコス州の中国総領事館が先月、(同州)イトバヤト町における農業生産向上事業に300万ペソ以上相当の支援を約束してくれた」と発表した。イトバヤト町は同州最北の自治体でフィリピン最北島であるマブリス島(ヤミ島)も属する。同島から台湾を結ぶ海域は、南シナ海のシーレーン(国際水路)の要衝とされるバシー海峡であり、同町の地政学的・戦略的な重要性は極めて大きい。
台湾有事が勃発した際、バタネス州は在台海外就労比人(OFW)や亡命台湾人の一次受け入れ先となる見通しだが、大規模な帰国者・難民を受け入れるだけの港湾インフラが整っていないとの声も上がっている。それについてカイコ知事は「比港湾公社が設計士を派遣して港湾建設計画を作りを支援する予定だ」と述べた。
4月に過去最大規模で行われた比米合同軍事演習バリカタンでは、バタネス州での離島防衛・奪還訓練も実施されていた。(竹下友章)