「沖縄の夕べ」で舌鼓 チャリティーコンサート開催
マカティ市で沖縄県産業振興公社協賛のチャリティーコンサート「沖縄の夕べ」が行われた
首都圏マカティ市のアヤラモールにあるアイアンマン・ステーキハウスで6日夜、同ステーキ店主催、沖縄県産業振興公社協賛のチャリティーコンサート「沖縄の夕べ」が行われた。マニラ在住の日本人バンド「マニラエクスプレス」をゲストに招いた夕食会の一部売り上げは、イフガオ州ハパオの世界遺産である棚田を守る山岳民族の子どもたちが通う三つの小学校に寄付される。
夕食会は午後6~7時、7~8時の2部構成で、それぞれ20席の前売り券は完売し、曲目も一般に馴染みのあるキロロ「未来へ」、ザ・ブーム「島唄」、喜納昌吉「花」とウチナーグチ版「ハイサイおじさん」などが演奏された。また、実際に三線を使用した本竹祐助作詞・歌「19の春」、在住日本人によるフラダンスグループ「マナワレア」のメンバー4人も加わった夏川りみ「涙そうそう」も披露された。
マナワレア講師で、フィリピン在住8年目の笠原雅恵さんによると、今回のコンサート曲目に「涙そうそう」があるのを知って参加を打診した。ハワイ語で「寛大な」を意味するというマナワレアは、約12年前に結成され大人はマカティ市で、子どもはタギッグ市BGCで、それぞれ週1回ずつ練習を行っているという。「今日は選抜の4人での参加」で、「アンコール」の音頭を取るなど、率先して場を盛り上げていた。
2018年6月~20年4月まで国際協力機構(JICA)の専門家として比駐在、その間1年弱マニラエクスプレスでベースやドラムを担った善本隆典さんは、たまたまゴールデンウィークとも重なり、コンサートに合わせた再訪となった。
コンサート後に「感動した。料理もおいしかった」。また「日本の音楽がフィリピンで親しまれているのはすごくいいこと」と感想を口にした。厳格な防疫措置が敷かれた当時、「子どもたちが友達にさよならすらできないまま帰国」したそうで、今回は家族を伴った旅行機会ともなった。
▽曲目に広がりも
マニラエクスプレスのリーダーでアコースティックギター兼コーラスの宮地正人さんは、同ステーキハウスを営む友人の屋良朝彦さんから誘われ、「チャリティーにとっても役に立てたら」と参加を決めた。「普段はモールなどでフィリピン人に向けて日本の曲を演奏していたが、今回は屋良さんからの選曲を得て、お陰でレパートリーが広がった」とし、現在73歳の宮地さんは「三線も70を過ぎて練習するとは思わなかった」と笑った。
バンドでバイオリン兼ボーカルの金森将吾さんは、オーケストラでバイオリンを弾いていた腕前を持つ。歌は「カラオケが大好き」で「下手の横好き」と断りながらも、沖縄独特の歌唱にも見事な対応を見せた。金森さんは「元々演歌っぽくこぶしをきかして歌うのは得意」と話し、7月に予定されているイベントでは氷川きよしの「ズンドコ節」を歌うことも明らかにした。
▽長年の関係性の上に
沖縄県フィリピン委託駐在員でもある屋良朝彦さんは、主にフェイスブック上で告知してきた今回のイベントは「初めての試みだったが、大盛況で良かった」と振り返った。マニラエクスプレスの宮地さんと20年来の付き合いがあり、「結婚式でも演奏してくれた」仲だという。
チャリティーについては、ステーキを主菜に1500ペソ、2500ペソのコース2種類を考案。それにキッズミールも含め、「2500ペソのコースでは800ペソが、1500ペソでは500ペソ、千ペソでは200ペソが寄付に回される」と説明した。
集められた寄付は、環境NGO「コルディリエラ・グリーン・ネットワーク」アドバイザーでバギオ在住の反町眞理子さんに、Gキャッシュなどを通じて送られる。屋良さんは「先住民の子どもたちが通う小学校の事務費用などに充ててもらえれば」と目的を語った。
屋良さんによると、イフガオ州バナウエに近く、棚田で知られるハパオを流れるハパオ川には、治水目的で日本政府が1・2キロの堤防を築いていたが、その一部20メートル程が2021年12月の豪雨で決壊した。その結果、民家が流され、下流域の棚田にも被害が及んだ。
当時反町さんから緊急援助の話があり、屋良さんと九州在住の人とで金銭的な支援を行った。その経緯があって、ハバオとの繋がりが生まれ、今回のイベント開催に至った。 (岡田薫)