組織内の平等、多様性守られる 分散型自律組織「DAO」
次世代の組織形態DAO(分散型自律組織)を導入したオタキュート大原雄代表に話を聞いた
次世代インターネットの概念である「Web3・0」が提唱され始め、組織の在り方にも新たな形態が台頭してきた。DAOは分散型自律組織という英語の頭文字で、中央集権的な従来の株式会社とは異なる新たな組織形態。現在日本でも自民党デジタル社会推進本部などによるDAOの法制化検討の動きも活発化している。ここフィリピンでもDAOの導入に踏み出した企業がある。今回DAOによる初めての事業(イベント)を催したオタキュート。「DAOは文化祭の実行委員会」と話す大原雄代表に導入した自社DAOについて話を聞いた。(聞き手・沼田康平)
―DAOとはどのような組織か。
簡単に言えば「文化祭の実行委員会」。DAOという組織内で話し合いながら、事業についての提案、投票、実行まで行われる。誰もが参加できる組織で、インターネット上に拠点を置く。参加者のほとんどが個人で、意思決定は暗号資産(トークン)を持つ参加者がそのトークン分を投票し決める。
例えば、今回16日に行われたオタキュートイベント(事業)はわれわれ(個人)が提案したもので、そのイベントに賛同する参加者らによってイベント内容を決定し、今日の実行まで行ってきた。意思決定は暗号資産であるコスプレトークン(COT)をもつ参加者らによって決を採り、イベント内容を決定。提案は誰でもできるが、意思決定にはCOTが必要。現在オタキュートのDAOプラットフォームでは450人が参加しており、事業の提案から協議や意思決定などはアプリ内で行っている。話し合いや協議はアプリ「Discord(ディスコード)」、投票にはアプリ「Snapshot(スナップショット)」を利用している。
―収益化構造は。
オタキュートのDAOでは、資金は暗号資産であるCOTを日本だけでなく比でも普及させたいキュア社から定期的に助成金を受け取っている。助成金の通貨はCOTや米ドル、ペソの場合もある。それをDAOで決定した事業の予算として組み込み、事業を実行。事業参加者への報酬や事業に掛かった経費はこの予算から賄われる。イベントで発生した収益はDAOの新たな事業に向けた資金として次回に使用される。また事業とは別に、COTの価値が上がることで得られる差益も収益になる。
―メリットは。
株式会社の株式を所有する株主は、意見を反映させたり事業に参加できるが、それは一部の特権階級によるもの。DAOはガバナンストークン(オタキュートではCOT)と呼ばれる投票権として作用する。そのDAOで決められたトークンを持つものは誰でも、いくらからでも投票に参加できる。
またトークンを持っていなくてもディスコード内で日々行われている話し合いや雑談は誰でも参加でき、またDAOに貢献すれば、ガバナンストークンを報酬として受け取ることもできる。そのトークンは法定通貨への換金やDAOの発展に伴うトークンの値上がりを期待し長期保有することも可能。
敷居の低さと平等性、多様性が守られていることで、自らも大きな事業の一旦を担え、同時に好きなこと、得意なことで報酬を得られる点が参加者のメリット。
―デメリットは。
従来の株式会社にある中央集権ではなく分散的な組織を目指す多様性、平等性が確保されると同時に、意思決定は遅くなる。なので、多くのDAOでは複数の事業が同時並行で進めれる。中央集権ではないため、DAOの目指すべき世界観に沿うものであれば事業の立ち上げ自体は誰でも可能。
―将来目指すところは。
ボードメンバーであるわれわれが知らない場所で知らないDAOメンバーたちがDAOにプールされた予算を活用しイベントを開催しているような状態にしたい。
その暁には「世界規模の熱狂を生み出そう」というオタキュートDAOのスローガンも果たされていると考える。