12年ぶりマニラ寄港 国際NGOピースボート
国際NGOピースボートの船が12年ぶりマニラ寄港。世界一周クルーズはコロナ後世界初
世界各地を周り国際交流を図る「地球一周の船旅」を出す国際NGO「ピースボート」の第114回クルーズが今月7日、横浜港を出航し、13日午前、12年ぶりにフィリピン・マニラ港に寄港した。行き先の見えないコロナ禍で3年間中止を余儀なくされ、各国で規制も随時変更される中、ようやく3年ぶりに船旅を再開した。
まずは中国に寄港する予定だったが、コロナ対策で外国船の受け入れ態勢が整わず急きょ予定を変更。マニラ寄港は15日のみの予定だったが、初寄港地となり13~15日に延長された。
今回のチャーター船は15階まである客船「パシフィックワールド号」。ピースボート40周年記念クルーズで、同団体史上最大の船での初出航となる。コロナ後、世界一周を再開したのは今回のクルーズが世界初という。
また、2009年から25回以上ピースボート船長として船旅を率いてきた、ウクライナ・オデッサ出身のビクター・アリモフさんを名誉船長に迎えている。ロシアによる侵攻後、家族とルーマニア・コンスタンツァに難民として身を寄せており、3年ぶりに来日・乗船したアリモフ船長は、「人道支援と過去乗船者らからのメッセージに励まされた」と振り返った。また、「裏方も船内も本当にユニークで多国籍だが、平和と友情という共通の信念のもと、数週間で大きな家族のようになることが魅力」とし「私たちの出航で、世界に『旅ができる』を見せられたら」と笑顔で語った。
国内外各分野の専門家などで船内講義なども行う「水先案内人」として30回以上乗船しているジャーナリストの鎌田慧さんは「船旅を通して、年代を超えてずっと世界が繋がっていることを感じてきた。3年ぶりの再開に、また帰ってきたという感激の気持ちが強い。今回の出航式の挨拶をしたくて乗船オファーを受けたほど」と声を弾ませた。「各地の文化や料理、人に対する好奇心が強い人が多い印象。違いに対する寛容度を上げていく船だと思う」と語った。
これまでフィリピンに訪れた4回はすべてピースボートの寄港という航海作家の金丸知好さんは「3年はあっという間だった。マニラに着いて、港で歓迎パフォーマンスを受けて、普通に乗船者が船を降りて普通に街を歩いていく光景を見て、やっと外国に出る船旅が始まったんだなと実感できた」と微笑んだ。
今回の乗船者数は約1200人。うち約200人は韓国、台湾、中国本土などアジアからの参加者という。乗組員やクルーとしてフィリピン人も多数乗船している。
NGOピースボートは1983年に設立。「経社理の一部の活動分野だけについて特別の能力と関心を有する」NGOに認められる、国連の特殊協議資格を持つ団体として、船旅を続けながらSDGsや核兵器廃絶などを中心とする国際問題や災害支援に積極的に取り組んでいる。(深田莉映)