マニラは「国内旅行者が大半」 来年の外国人観光客増に期待大
検証4・入国者は増えてはいるが、マニラ市の観光地で旅行者らの声を聞いた
観光省によると、今年の外国人観光客数は政府目標を大きく上回り12月19日時点で前年比44%増の246万人、観光収入は11月20日時点で1490億ペソに達した。今年2月10日に157カ国からの観光客受け入れを再開して以降、着実に増え続けてきた観光客は10月中旬時点で政府目標の170万人を超え、11月には200万人を突破。国内ではマスク任意化の大統領令が発効され、観光業再開の機運は高まりつつある。
フラスコ観光相は19日、2023年の観光客目標数を今年の倍以上となる480万人、観光収入は58憶ドル(約3200億ペソ)を掲げた。一方でコロナ禍以前の800万人水準にはまだほど遠い。増えているという外国人観光客だが、実際の観光地ではどうなのか。ドロマイトビーチ、リサール公園、マニラ大聖堂などマニラ市の主要観光地で観光業を検証してみた。
今年整備が完了し一般開放された首都圏マニラ市のマニラ湾遊歩道沿いにあるドロマイトビーチでは27日、多くの観光客が午前中から白いビーチを埋め尽くしていた。
アメリカ出身のポールさん(72)は息子のジェインさん(53)とともに観光目的で来比したという。ポールさんは「入国規制が緩和された2月にも来比していた。今回は4カ月間滞在する。海と女性が綺麗な国」と笑顔を見せ、来年も訪問予定だと明かした。
またインドネシアから到着したばかりだというイタリア出身のエレーさん(23)は「興味があったアジアの国を旅行している。比のパレンケ(市場)を歩いてきたが、インドネシアよりも混沌としていて面白かった」と話した。数日後には友人とパラワン島へ海を見に行くという。
マニラ市イントラムロスの街中で出会ったのは、息子のビンセントくん(7)を連れたカナダ出身のマークさん(44)。「物価が安く、シューノケルや綺麗な海が楽しめるので来比した。観光査証30日間を目一杯楽しむ」と意気込んだ。比の魅力としては物価の安さに加え、美しい海を含む観光資源が大きいようだ。
▽国内旅行者が大半
一方、著者が午前中の1時間観測したドロマイトビーチでは外国人と思われる来客はわずか2組で、多くはフィリピンに住む国内旅行者が大半だった。
友人6人で盛り上がっていたのはモンテンルパ市在住のレイニェルさん(33)。整備が完了したドロマイトビーチを一目見ようと訪れたと話す。「国立博物館やリサール公園を回って日帰り予定。来年はバギオ市を観光したい」と明かした。
また在比12年となるガーナ出身のエロームさん(44)はマニラ市生まれのローリアさん(63)と気分転換でビーチを訪れたという。「来年は日本やベトナムなどに足をのばせたら」と語った。
1820年開園の歴史あるリサール公園ではピクニックのように大人数でシートに座り昼食を楽しむ家族の姿がたくさん見られた。ピンク色のアバヤ=イスラム教に多く見られる顔と手足以外を隠すコート=を着て友人とのセルフィー撮影をしていたライダ・ウトさん(23)は10月にミンダナオ島からマニラ市に来て、首都圏周辺の観光を楽しんでいるという。「首都圏では全てが綺麗で大きい。マニラが好きになった」と明かした。1月には海外比人就労者(OFW)の家政婦としてサウジアラビアに出発すると話した。
取材当日に結婚式が行われていたマニラ大聖堂前ではイザイナさん(17)とカーリーさん(18)が新婚を見つめていた。「歴史的建造物の観光に来た。コロナ禍以降、初の旅行。来年は国内ならボラカイ島、国外なら日本に行ってみたい」と語った。
▽来年に期待
観光地で働く人たちにも話を聞いた。リサール公園前で出会った馬車で観光案内をしているフランシスさん(22)は「コロナ禍ではオンラインビジネスで食いつないでいた。今年から観光客が増え観光案内を再開した」と明かした。
イントラムロスの街を案内するアーネルさん(34)は「コロナ禍は友人の経営するサリサリストアで生計を立てていた。依然として国内旅行者が多いが、来年にはより多くの外国人観光客が期待できる」と笑顔を見せた。
マニラ大聖堂前で15年間観光案内をしているというレイナルド・ナーヴァさん(60)は「コロナ禍では仕事も無く、ずっと家で過ごした。今年から観光が活発化したが、外国人の客足はまだ少ない。国内旅行者が6~7割を占める」と語った。
聖堂周辺で20年間ペンダントを売り歩いているカメンシア・ハオさん(75)も国内旅行者が多いとした上で、「マルコス政権は雇用創出などよくやっている」と政権に対する観光政策を支持する見方を示す。
本取材で10人の観光案内人に話を聞いた限り、依然として国内旅行者が大半を占め、外国人観光客は少ないという。一方、「来年には観光客数増加が期待できる」と全員が声を揃えた。加えて取材した比人24人全員が「来年に国内外問わず観光したい」と話すなど、2023年に向けた観光意欲は確実に高まっているようだ。(沼田康平・終わり)