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12月19日のまにら新聞から

トップに聞く 信頼構築に全身全霊を  PAPTI・塚本秀幸社長

[ 3291字|2022.12.19|社会 (society) ]

20年12月に比に着任して3年目を迎えるフィリピン・アドバンスド・プロセッシング・テクノロジー・インクの塚本秀幸社長に聞いた

フィリピン・アドバンスド・プロセッシング・テクノロジー・インクの塚本秀幸社長=カビテ州ロサリオで11月17日、沼田康平が撮影

フィリピン・アドバンスド・プロセッシング・テクノロジー・インク(Philippine Advanced Processing Technology,Inc.)は株式会社五輪パッキングの関連会社として1996年10月に設立され、昨年25周年を迎えた。現在はテレビCMでも有名なRIZAPグループの子会社として海外部門の一翼を担う。主にパソコンやプリンターなどに組み込まれる精密部品を手掛けている。20年12月に比に着任して3年目を迎える塚本秀幸社長に話を聞いた。(聞き手は沼田康平)

―主な事業内容は

 電子機器及び車載光学部品、フィルム、両面テープ、パッキン等の打ち抜き加工品の製造販売。ノートパソコンなどのモニターに組み込まれているフィルムやさまざまな機器に使われるスポンジのようなクッション材など。お客様の設計書に基づき打ち抜き加工を主軸にしている。

―コロナ禍の影響や現在の業績は

 20年のロックダウンのときは全く動きが取れなかったものの、家庭用PCやプリンターなどの巣ごもり需要により主要顧客が好調で、コロナ禍前の水準を維持できた。

―インフレ、材料高騰の影響とその対策は

 電力や燃料コストの高騰は製造業にとってインパクトが大きい。当社では電気代は前年比40%増、燃料代は同70%も増加。電力消費の大半が稼働機械ではなく、エアコンが占める。材料の特性によっては作業場所や保管倉庫の温度管理が必要でエアコンが常時作動しているためだ。

 また原材料の値上げも止まらない。顧客からのコストダウン要請などもあり、板挟みになっている。企業努力による上昇分吸収にも限界がある。

 対策としては、全社コスト削減活動などを積極的に取り入れ原価低減に努めている。小さなことかもしれないが、携帯電話プランの見直しやより安い(事務用品も含めて)仕入先の開拓を進めている。また製品への価格転嫁も選択肢としてあるが、お客様へ全て転嫁するわけにもいかない。協議のうえでコストアップをお願いしている。いずれにしても小さいことからやっていくしかない。

―今までピンチだったことは

 着任して3期目になるが、業績は今期が一番ピンチかもしれない。在宅ブームが一段落した一方で、中国の都市封鎖やロシアのウクライナ侵攻の影響で部品の流通などが滞り、生産できない事態も経験した。取り巻く市場環境が冷え込んでいる。

―経営上の信条は

 「心の通うモノづくりを通じて、社会の貢献と企業の発展、並びに社員の幸福を希求する」という企業理念が信条。モノを作って販売だけでなく、P―QCD(Perfect―Quality、Cost、Delivery)の徹底を行動指針としてお客様との信頼構築を大切にしたい。我々中小企業にとってお客様に寄り添うのと同じく、地域にも寄り添い、地域活動(ボランティア活動)への積極的な参加や地域雇用の創出等、SDGsの取り組みを理解し、できる事から少しずつ始めている。

―尊敬・目標としている経営者

 「人は宝」だと話した五輪パッキング本社の故宇山文隆前社長。面倒見がよく、部下にも温かく接してくれた。精神的に苦しく、辞めたいと相談した際も、退社以外の選択肢を一緒になって考えてくれた。また、海外赴任時は日本にいる家族の事も気に掛けてくれた。人と真剣に向き合い、ときには叱ったり、褒めたり、いつも真をつくアドバイスをくれる存在。

―経営判断で重要なことは

 相手の立場に立って物事を考えること。そして疑う視点を持ち、背景を学ぶようにしている。

―これまでで一番大きな経営判断は

 新たな加工方法導入への投資とその加工方法が武器になると判断したとき。

―社員にとってどんな社長でありたいか

 常に先頭に立ち、方向性を明確化し、素早く意思決定ができる社長。そして何より会社、社員とその家族を守れる社長でありたい。

―社員との関係で気にかけていることは

 異文化を理解し明るく楽しく接する。嫌々仕事をやってもはかどらない。笑いは世界共通で、日本で面白いことはフィリピンでもそう。楽しい職場なら、自分の仕事を好きになってくれる。

―フィリピン赴任時にまず思ったことは

 考えていた以上に貧富の差が大きい。マレーシアでの勤務経験はあるが、よりインパクトが大きかった。スモーキーマウンテンの子供がごみの上を裸足で歩いている姿には驚きを隠せなかった。

―日比での違い

 職務上、日本では業務範囲が決まっていたが、フィリピンでは全体を見なければいけない。一方、比の日本人コミュニティーでは横のつながりが強く、お会いする機会が少ない他社の方とも交流しやすい。

―会社として目指すところは

 これまで人件費の比較的安い比では人の手による加工が主流であったが、今後さらなる安定した品質やスピードを求められることを見据えて自動化の導入を目指したい。人件費は毎年上がっており、今年は全体で8%増だった。人の手による設定や材料の見極めなどは必要だが、その分バラツキも出てしまう。機械による自動化で品質の安定化が必要だ。

   × × ×

 つかもと・ひでゆき

1964年生まれ、東京都出身。アパレル関連の自営業を営み、35歳のときに五輪パッキングへ。2020年12月からフィリピンに赴任し現職。

もっと聞きたい!

―趣味は

 スポーツ全般。今はゴルフしかできていないが、とにかく身体を動かすことが好き。ゴルフは父親の影響で13歳からやり始めた。現在はリビエラやオーチャードでプレイしている。

―最近感動・涙した出来事は

 昨年嫁いだ長女から「妊娠した」との報告があったときや、巨人ファンにもかかわらず、ヤクルトスワローズの村上宗隆選手が本塁打56本を達成したときは感動した。

 また、20年ともに暮らした愛犬が亡くなりビデオ通話越しに涙が止まらなかった。年末に会えると思っていた。

―好きな言葉は

 親会社RIZAPグループの故新将命元最高顧問の言葉「今日の自分は昨日までの自分の結果である。将来の自分は今日からの自分の結果である」。知識やスキルよりも大切なのが、まず情熱。その情熱を燃やし続けるには目的・目標を持ち続けることで、「人は変われる」ということを学び、言葉として大切にしている。

―好きな音楽は

 サザンオールスターズ。

―好きな本は

 歴史小説。坂本龍馬が好きで司馬遼太郎の「竜馬がゆく」はよく読んだ。

―好きな映画は

 アクション系。最近だとトップガンの最新作「マーヴェリック」を娘と観に行った。

―無人島に持っていくなら

 ナイフ等の刃物。

―子供のころの夢は

 プロ野球選手か芸能人。小学校の卒業文集には巨人に入団して長嶋茂雄、王貞治の後の4番。無理なら欽ちゃんの弟子と書いてあった。

―学生時代に熱中していたことは

 ディスコ通い。歌舞伎町や渋谷、六本木を踊り歩いていた。

―料理はするか

 インスタント以外全くしない。居酒屋「おおきに」(首都圏マカティ市)で外食の毎日。大根やごぼう天などで13キロ減量に成功した自称「おおきにダイエット」を続けている。

―人生の分岐点は

 35歳のときの自営業からの転職。海外から低コスト品が流入するなか、「この先続けてもいいのか」と自問自答し、サラリーマンになるなら今しかないと決断した。海外で働くとは思っていなかったが、判断に後悔は無い。

―10年後は

 当社は創業26年だが、40、50年とお客様に信頼され、成長し続ける会社になるよう私の任期中に強い基盤を築き上げたい。

 個人的には孫からカッコいいと言われるおじいちゃん。

―挑戦したいことは

 トレッキングとゴルフクラブのチャンピオンシップ。

―未来の色は

 変化とともに何色にも染まる白。

社会 (society)