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11月22日のまにら新聞から

トップに聞く 「誰もが手に入れられる価格で」 フィリピンヤクルト・鈴木啓之副社長

[ 2945字|2022.11.22|社会 (society) ]

「比の明るさ、若さには国力感じる。社内にも躍動感が満ちている」

フィリピンヤクルト株式会社の鈴木啓之副社長=同社提供

 世界40の国と地域で事業を展開するヤクルト。フィリピンでは販売開始から44年目を迎えたフィリピンヤクルトが、乳酸菌飲料「ヤクルト」を地道に浸透させてきた。本店は首都圏マニラ市エルミタ地区で、製造工場(第1)をルソン地方ラグナ州カランバ市に構える。比では市場需要が生産本数を上回ったことによる2018年からの「出荷制限下」でも、22年9月時点で世界第3位の販売実績を更新中だという。比滞在歴16年に上り、15年から副社長に就任している鈴木啓之さんは、日々の中で「フィリピンの明るさ、若さには国力を感じる。社内にも躍動感が満ちている」と話す。今回鈴木さんからヤクルトの現状について、メールで回答をもらった。(岡田薫)

―比における事業の現状は

 ミンダナオ地方東ミサミス州で2021年6月に着工し、建設中のエルサルバドール第2工場は、建物が今年10月に完成し、23年3月の稼働を目指す。第1工場の生産量は1日あたり420万本で、第2工場が稼働すれば1日160万本が加わり、市場に日々580万本を供給することが可能になる。首都圏以外の供給は30社ある地方代理店に託している。

 世界40の国と地域でヤクルトを販売しているが、シンガポールでの販売開始時に、競合他社がすでに複数種のフレーバーで市場展開を行なっていたため、唯一シンガポールで3種類のフレーバー(アップル、グレープ、オレンジ味)のヤクルトを販売している(比のフレーバーはオリジナルのみ)。価格改定は2011~現在までで1度だけ。2018年に1本あたり8ペソから9ペソに1ペソだけ引き上げたが、同期間中に売上本数が3倍以上に増えた。売上増によって、値上げは極力避け、誰もが手に入れられる価格で飲んでもらえることを目指している。

 比では許認可事項が多種に渡り、許可取得の事前予測が難しい点はある。ただ、日本を含む欧米諸国から赴任すると、将来の市場変動(形態を含む)の先読みや備えが準備し易いといった利点がある。比には競合相手が数社いるが、ヤクルトにはプロバイオティクスのパイオニアとしての約90年の歴史と、東京都国立市の中央研究所などでの数多くの有効試験成果の蓄積がある。共に切磋琢磨できることで、乳酸菌市場も大きくなっていくため、競合他社の存在は歓迎している。

―ヤクルトレディ、取引店の現状とその推移は

 2013年に約2600人だったヤクルトレディは、22年8月には約4000人に。取引店数も13年の約11万4000店から同約12万5000店まで拡大した。 全国に散らばるヤクルトレディは「社員」という括りではなく「個人事業主」としてヤクルト・マーケティング・コーポレーションと契約した人たちを指す。首都圏の例ではセンター(拠点)が46カ所あり、ヤクルトレディの年齢層は20~70代と幅広く、平均年齢は43歳になる。基本的に家庭や職場の顧客の元へヤクルトを毎日届けている。服装は移動に適した統一の作業服で、お届けの形態は徒歩約70%、自転車やオートバイ使用などが約30%となる。

―新型コロナ禍はどのように対処したか

 2020年3月にルソン島全域に防疫強化措置が敷かれ、外出禁止や交通規制で社員の通勤やヤクルトレディの商品お届けに影響が出た。社員の多くが自宅待機を強いられたことで、工場生産や営業活動にも大きく影響した。社員に生活支援の義援金を給付していた。バランガイ(最小行政区)閉鎖に伴う移動禁止を受け、2020年4~5月は首都圏でお届けを中止し、ヤクルトレディにも生活支援金や食料などを給付してきた。防疫強化措置の緩和後の同年6月から、コロナ感染防止の指針を作成しお届けを再開した。一方で、65歳以上のヤクルトレディは高齢者の外出規制で、家族や親戚がお届けを代行する光景も見られた。

―通常事業とは異なる面での活動は

 社会に対して還元・貢献する慈善活動は実施している。例えば、孤児や身寄りのない高齢者、障害者らに毎年12月、慈善団体や更生施設13カ所を通じてヤクルトの無料配布を継続してきた。地域の栄養失調の子どもたちに、バランガイの給食プログラムを通してのヤクルト提供。新型コロナ禍で、病院と高齢者施設の計31カ所で働くフロントライナー向けに、一時期ヤクルトの寄付も行っていた。加えて21年からは、新型コロナワクチンの接種会場での ヤクルト無料配布も続けており、人々の健康維持・促進に少しでも役に立てたらと考えている。

 すずき・ひろし 愛知県出身。京都外国語大学外国語学部英米語学科卒。株式会社ヤクルト本社入社後、2015年から現職。

もっと聞きたい!

―社長の役割とは

 将来を見据えて一歩先を進み、明るい未来を描き、社員を鼓舞する。

―趣味は

 体を動かす。アパレルショップを見て回る。スワローズの勝ちゲームを観て騒ぐ。

―お酒は飲むか、好きな種類は?

 365日。シャンパン、赤ワイン(カベルネ・ソーヴィニヨン)、白ワイン(シャルドネ)、ブランデーフンダドールWライト、焼酎黒霧島。

―もしフィリピンで自由に住めるなら

 エルニド。

―カラオケの十八番は

 哀愁のカサブランカ(古い)。

―有名人に似ていると言われたことは

 五木ひろし(本人は不満)。

―何でも一つ願いが叶うなら

 不老長寿。

―日常生活でのルーティーンは

 起床と共に、検温、血圧・脈拍検診、スクワット、腕立て、腹筋、髭剃り、その後にシャワー。

―好きな言葉や座右の銘、格言は

 Carpe Diem(今を生きる、今日という時を大切にする)。

―好きな音楽・アーティストは

 スパニッシュ・ギター、ジプシーキング、サイモン&ガーファンクル、ポールモーリア。

―好きな食べ物・飲み物は

 フィリピン料理は全て、特にチッチャロンブラクラック、レッドフォース、ピールセン。

―好きな本、おすすめは

 フレデリック・フォーサイスの「悪魔の選択」他全シリーズ、中国歴史もの「三国志」「水滸伝」「楊令伝」「岳飛伝」(北方謙三)。

―好きな映画は

 「TOROY」「300」「グラディエーター」「ベン・ハー」「エルシド」「円卓の騎士」。

―幽霊やUFOなど超常現象を信じるか

 信じる。

―明日が地球最後の日だったら

 家族、愛する人との最後の1日を過ごす。

―無人島に一つだけ持っていけるなら

 iPhone

―これだけはほかの社長に負けないこと

 時間厳守。

―子供の時の夢は

 パイロット、または外交官になること。

―10年後どんな風になっていたいか(会社、個人)

 第4工場が稼働し、現在の3倍の数のお客さまから愛される商品、企業であり続けたい。いつまでもフィリピン人社員の心に残る存在でありたい。

―個人的に挑戦したいことは

 各国での希少な体験、珍しい食べ物、風習、考え方等を書籍にまとめる。

―最後に一言

 「先ずやる!」(鈴木啓之行動指針)

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