MJS児童が解決案発表 渋滞やごみ問題でJICAに
JICA比事務所でMJS小学部5年生が渋滞やごみ問題で考案した解決策発表
首都圏マカティ市の国際協力機構(JICA)フィリピン事務所で20日、マニラ日本人学校(MJS)の小学部5年生が、交通渋滞、プラスチックゴミ、食品ロスの削減という課題について自分たちで考案した解決策を発表した。
JICAは年に一回、過去10年ほどにわたり、身近な社会問題の解決に向けたMJSの生徒・児童が発表するアイデアや提言に耳を傾ける機会を持ってきた。しかし、2020年1月(19年度)の対面後、新型コロナ禍で20年度はJICA職員も一斉帰国で中止となり、21年度はオンライン開催で行われていた。
今回児童が取り組んだ課題については、今年6月にJICA職員2人がMJSを訪問し、特別学習の一環で課題について事前に説明を行っていた。その後、児童たちはチーム別で調べたり、議論を行ったりし、それぞれの課題が抱える問題の認識を深め、共有してきた。発表当日は、JICA職員からの突然の質問にも、物おじせず堂々と自身の意見を伝える児童の姿に関係者から感嘆の声も聞かれた。
交通渋滞について、あるチームはジプニーが引き起こす渋滞に着目し、特定のジプニーの停車が周囲に渋滞を波及させないタイミングを知らせるメロディーが流れる運転手向けアプリケーションの「ジプリー」を提案した。また、車の割り込み削減や歩道を渡る人を増やす、1分ごとに赤と青が入れ変わる信号機など、実現可能と思えるアイデアも飛び出した。
プラごみ削減について、各チームがプラスチックごみの排出量で比は世界第3位という国連環境計画(UNEP)のランキングを引き合いに出し、フルーツの皮でストローを作ったり、買い物用のエコバックやマイボトルの使用が店舗でのポイント還元につながる制度、プラごみから洋服や靴を作るアイデアなどが発表された。
また、比における食品ロスも年間933万トンが廃棄されているといわれ、同じくUNEPの2021年「食品ロス世界ランキング」で11位と高い水準。この課題解決に向き合ったチームは、期限切れが近づいた食品を回収するリサイクルボックス、そしてコンビニやスーパーを政府公認の組織が回って、売れ残りなどをいずれも貧しい人に「プレゼント」する制度。残った食品の肥料化やバイオ燃料、レストランなどに対し、「ラージ、ミディアム、スモール」といったサイズ別メニューの提供を求めるなど、食べ残しを減らす仕組みも提案された。
▽専門家がアドバイス
プラごみチームへの講評を行ったJICAフィリピン事務所の橋爪拓也企画調査員は、マルコス大統領も就任時のスピーチの中で触れていたという同課題について、一般に「強制は効果は高くない」とアドバイスし、エコバック普及などに自治体を巻き込み、関係者を増やす方法を効果的な例として紹介した。
JICA同事務所でプログラム・オフィサーとして働くロクサン・バルドサさんは児童の発表に「ワクワクした」とし「すべての意見を大切にしながらフィリピンの発展に力を注いでいきたい」と思いを語った。
JICAで勤続18年、比に来て5年目の廣澤仁次長は「JICAでも同様に、プロジェクト実施に向けた問題分析や、日本政府はじめいろいろな人を前にプレゼンテーションをして思いを伝えることがあるが、時にうまくいかないこともある」との実情に触れた。その上で「今日さまざまなアイデアを聞き、がんばろうという勇気をもらった」と伝えた。
5年1組の内田ゆうとさんは、まにら新聞に「学校外(での学習機会)は5年生になってから初めて」。発表で難しかった点は「自分で考えたことを人に伝えること」だったと話した。(岡田薫)