比はアジアワーストの19人 21年の環境運動家殺害
2021年に比で殺害された環境運動家は19人でアジアワースト。10年で270人被害
国際人権・環境NGOのグローバルウィットネスは29日までに、世界の環境運動家殺害に関する最新報告書を公開した。それによると、比で2021年に殺害された環境運動家は19人で、アジアワーストとなった。2020年の30人より減少したが、2012~21年の10年間の累計殺害件数は270人に上った。
比での環境運動家殺害の80%は大企業による開発への反対運動に関連して発生。また、3分の1は鉱山開発反対運動に関連していた。報告書は「犯人の身元が判明した数少ないケースの中でも、そのほとんどが背後に国家権力の影があったと疑われている」と指摘。また、活動家殺害に関して「比では不処罰とする慣習が横行している」とした。
数ある環境問題の中でも、世界的に鉱山開発を巡る運動家殺害が最も多く、21年は27件報告された。比でも同年6人殺害された。21年末、比政府は17年4月から操業停止措置をとっていた露天掘り鉱山の操業再開を決定。露天掘り鉱山は有毒物質の河川流出など深刻な環境問題を引き起こしてきた経緯があり、比国内の環境・人権団体らは「大地と活動家を危険にさらす」と警鐘を鳴らしてきた。
2021年に最も環境運動家殺害件数が多かった国はメキシコで54人。次いで、コロンビア33人、ブラジル26人、比19人、ニカラグア15人などの順だった。2012~21年の10カ年で1733人の活動家の殺害が報告されている。
比の環境団体カリカサンのジョン・ボニファシオ代表は声明で「マルコス現大統領は気候変動や環境についてよく語るが、何人活動家が殺されているかには言及しない」と指摘。「比政府が環境運動家の犠牲を真剣に考えていない証拠だ」とした。(竹下友章)