「歴史の真実を守れ」 研究者らが共同声明発表
比内外の研究者ら千人以上が連名で「歴史の真実と学問の自由を守るための声明」を発表
SNSを通じ歴史修正主義を拡散する選挙戦術を取ったとされるボンボン・マルコス氏が次期大統領の就任を確実にしたことを受け、比内外の千人以上の研究者らが19日、連名で「歴史の真実と学問の自由を守るための声明」を発表した。
呼びかけ人の1人であるアテネオ大のオスカー・カンポマネス教授(英文学専門)は「マルコス政権期に行われた人権侵害と略奪を修正しようとする執拗な試みに断固として反対すると共に、学問の自由を守り、出版物へのいかなる検閲にも抵抗し、『赤タグ』付けに反対する決意を示している」と説明した。
▽中身は新自由主義者か
同声明の呼びかけ人の1人で、9日の統一選挙に教員組合を基盤とする政党ACT=政党リスト制=から立候補していたデラサール大のダビッド・サンフアン教授(経済学)は、まにら新聞の取材に対し「連名者が千人以上集まったことは、マルコス家が政権に復帰したことで、学界が行動を開始した証拠」と強調。「もっと早く行動を起こすべきだったが、まだ希望はある。独裁制、歴史の歪曲(わいきょく)、マルコス時代の略奪・残虐行為の記録の上塗りと戦う時が来ている」とした。
また経済学が専門のサンフアン教授はボンボン氏の経済政策について「電気料金引き下げや米価の安定など一般国民に利益のある公約は守ってほしい」とする一方、「構造改革、規制緩和、民営化など新自由主義(市場原理主義)的政策を押し付けるだろう」と予測。
ボンボン氏は国民の租税負担の軽減を謳(うた)っているが、同教授は「大衆をなだめるために中小零細企業減税を行うかも知れないが、個人の所得税や付加価値税(VAT)など、国民の負担となる税を引き下げるかは大いに疑問」と指摘した。
未だ決まっていないボンボン政権の経済担当者について「ノイノイ、ドゥテルテ両政権のメンバーがリサイクルされるというのが学者間での見立て。『増税しなければ政府債務が返せない』という現経済財政担当閣僚と思想的に一致したメンバーになる」と予想した。(竹下友章)