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3月24日のまにら新聞から

「あなた方の敵ではない」 慰安婦問題行き止まりの打開求める

[ 1331字|2022.3.24|社会 (society) ]

リラ・ピリピーナが慰安婦問題を解決に導くよう大統領候補者に求める公開書簡への署名式を主催

第2次世界大戦中に日本軍により慰安婦にさせられたエステリータ・ディーさん(左)とリラ・ピリピーナのシャロン・カブサオ事務局長(右)=23日午前、首都圏ケソン市の人権委員会前で岡田薫撮影

 第2次世界大戦中の日本軍統治下に「慰安婦」として性奴隷を強いられたマリアロサ・ヘンソンさんがフィリピン人女性として初めて1992年9月に自身の体験を訴え出てから、今年で30年目を迎える。比人元慰安婦の支援団体リラ・ピリピーナは23日、首都圏ケソン市の人権委員会前で、慰安婦問題を解決に導くよう次期大統領に求める公開書簡への署名式を主催。また、元慰安婦の尊厳回復や正義を求める運動の継続を誓った。

 1994年結成のリラ・ピリピーナはこれまで、上下両院との対話や日本の裁判所、フィリピン最高裁での訴訟など、尊厳回復に向けた運動を続けてきた。次期大統領となる全ての候補者を念頭に置いた同書簡によると、過去30年の大統領のうち、慰安婦問題を優先課題として積極的に擁護した者はいなかった。

 書簡は「われわれの要求は今日でも、公式謝罪と真の賠償にある」とし、故小渕恵三元内閣総理大臣による1998年のおわびの手紙に触れた上で「日本での具体的な法制定や政府としての問題認識、補償を公告する力を伴うものではなかった」との認識を示した。さらに「日本が戦争犯罪の認知を繰り返し拒否している現状で、正義を達成することは不可能に見える」とし、比国内で法整備を優先させ、学校の歴史教育で慰安婦問題について取り扱うなど、国家的な理解を深めた上で日本への説得を促していくステップが重要だとした。

 リラ・ピリピーナのシャロン・カブサオ事務局長は「大勢の人たちが元慰安婦を支持してくれている。カピス州ロハス市にいる元慰安婦やその家族、その他支援者の署名も加えた上で6月30日に、新大統領に手紙を送付すると共にネット上でも公開する予定だ」と語った。

 元慰安婦でリラ・ピリピーナのメンバーであるエステリータ・ディーさん(92)は、ドゥテルテ政権に希望が見出せなくなっている中、「日本政府には慰安婦問題に理解を示し、正義を達成する手助けをしてほしい。私たちは自分の身に起こったことの正義のために闘っているだけで、あなた方の敵ではない」と呼び掛けた。

 ディーさんは西ネグロス州タリサイ市で14歳だった時、日本軍駐屯所に2週間監禁され、繰り返しレイプを受けたという。

 カブサオ事務局長によると、慰安婦像の撤去を求めた日本政府に比政府はただ従った。首都圏マニラ市のロハス通り沿いに2017年12月に設置された慰安婦像を18年4月に比政府が撤去したのを受け、「慰安婦像があることはフィリピン人の表現の自由と知る権利の行使において基本的なことだと私は言った。しかし、大統領府は、この問題で国民を啓蒙する立場であるにもかかわらず、『個人的な場所でのみ表現の自由を持つことができる』と回答した」と語った。

 またそうした一連の動きに抗議し、リラ・ピリピーナや元慰安婦、その支援者らが日本大使館前で要求を表明するために集会を開こうとした際、現政権による赤タグ付に遭ったことも明らかにした。

 現在、元慰安婦の多くが90歳に達し、大半がすでに亡くなっている。持病を抱えるなど高齢で寝たきりのロラ(フィリピン語でおばあさん)もおり、外に出て集会などに参加できるのは数人となっている。(岡田薫)

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